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[浦和、CWC3位の意義]“経験”がもたらす化学変化に注目
文:Second Wind 写真:Maurizio Borsari Date:2007.12.19
 5万人を超える「We Are Reds!」の大合唱が赤い観客席からこだまする。ここまでの道程は、決して平坦なものではなかった。

 12月16日に53,363人を集めて、横浜国際総合競技場で行われたトヨタ クラブワールドカップ(CWC)での3位決定戦で、アジア王者の浦和レッドダイヤモンズはアフリカ王者のエトワール・サヘルを2-2からのPK戦で下し、アジア勢過去最高の3位に食い込んだ。

 浦和にとっては、今季実に56試合目の公式戦(元旦の天皇杯決勝を含めれば57試合)。Jの合間を縫ってのアジアチャンピオンズリーグ(ACL)は、これまで時差を伴う長距離移動、過密日程、低額な優勝賞金(2006年は60万ドル:約6,800万円)、平日開催による集客の問題など懸案事項は多岐に渡った。それを物語るようにこれまでの日本のACL出場クラブは、ACLを軽視し、戦績もグループリーグ敗退が続いていた。

 しかし、浦和は敢然とACL制覇へ向けてチャレンジした。アジア王者への挑戦は、昨年天皇杯を制してACL出場を決めた時点から始まっていた。選手の負担を減らすためのスタッフによる事前準備はもちろん、観客動員の向上を図るために試合開始時間も20〜30分遅らせる処置をとった。一方、日本サッカー協会とJリーグも「ACLクラブサポートプロジェクト」を発足させて後方支援を行った。アウェー戦での金銭面を含めたこの支援は、浦和スタッフの綿密な準備との相乗効果をもたらし、アウェー戦6戦無敗(1勝5分)という形になって現れ、アジア王者として堂々とCWCへの出場へと結びついた。

世界地図上の現在位置を確認した浦和
 ACLを日本勢として初めて制覇してのぞんだこのCWCでは、ACL決勝の相手セパハンを下し、欧州王者ACミランとの対戦を実現した。

 これまで、アジア王者がFIFA主催の公式戦で欧州王者と対戦したのは、2000年にブラジルで行われた第1回世界クラブ選手権1次リーグで、カップウィナーズカップ覇者アルナスル(サウジアラビア)が欧州CL王者レアル マドリードに挑み1-3で敗れた、その1度のみ。

 ACLの地位が向上への軌跡をたどりはじめたのは2005年。それまで欧州と南米の王者が覇権を競ったトヨタカップが6大陸王者によるクラブチーム版のワールドカップへと姿を変えたためだ。

 今まで、誰もが待ち望んだ欧州ビッグクラブとJクラブとの真剣勝負。前半は互いが、持ち味である堅守を組み立ての中心にし、緊迫した展開が続いた。しかし後半、いったんACミランがエンジンをかけると、浦和は一瞬のスキを突かれる形で重い失点を喫し0-1で敗れた。

 それは、浦和が前がかりになったのを待ち受けていたように攻撃に転じたミランのしたたかな戦術だった。失点シーンは、素早いリスタートからFWカカが左サイドを持ち上がり、一瞬の加速だけでDF坪井を置き去りにする。中央から走りこんだMFセードルフは合わせるだけのきわめてシンプルなゴールだった。

 得点差以上に力の差を見せつけられたミラン戦だが、随所に今後へのヒントはかいま見えた。堅守でJ、アジアを制した浦和らしく、ミラン相手にも組織で対応しコンパクトな守備を徹底していた時間帯には決定的な破綻は招かなかった。しかし、そこからどう攻撃へと転化し、より効果的な形でフィニッシュまで持ち込むかは依然、解答が出ていない。たしかにアジア王者として恥ずかしい内容ではなかったが、世界に近づいたとも言えない。

欧州と南米の王者の激突から6大陸王者による覇権争いへと変わりACLの価値は上がった。Jに新たな目標が生まれた。
(C)Maurizio Borsari
 それでも、このミラン戦、そしてACLからCWC大会での一連の“経験”は特別な意味を持っている。世界を体感し、みずからの実力と世界のトップとの差を確認することができた。これによって、世界地図の中での日本のクラブの現在位置がさし示されたのだ。

 浦和は、J制覇→ACL制覇→CWCでの欧州、南米強豪クラブとの真剣勝負といった新しい時代のJクラブチームの進化のためのモデルを提示して見せた。

 ACLでの日本勢としての初優勝、CWCでのアジア勢初勝利、そして欧州王者ACミランとの真剣勝負、アフリカ王者を倒しての第3位。記録づくめの結果は、歴史に残る快挙といえるが、それにも増して選手、フロント等関係者やサポーターが体験したその過程が大きな財産となるだろう。ただし、それがたった1度の経験では単なる“記憶”に終わってしまう。

 今季、Jの覇権は鹿島アントラーズに奪われたが、J制覇の先にはアジアがあり、その先には欧州、南米の強豪クラブとの力を測る場が用意されていることがはっきりした。アジアを制し、CWCで欧州王者と対戦した “経験”は浦和にどんな化学変化をもたらすのか。今後の進化への過程に注目したい。

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