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[新時代迎えたチェルシー]困難な“モウリーニョ後”のハンドリング
文:粕谷秀樹 写真:Second Wind Date:2007.10.29
 美しい思い出に身をゆだねていても、何も解決しない。時代はつねにうつろいやすく、昨日の出来事でさえセピアに染まる。

 ジョゼ・モウリーニョとすごした3年は、意外な形でピリオドが打たれた。ディディエ・ドログバ、リカルド・カルバーリョ、フランク・ランパードが不満を漏らし、チェルシーサポーターがチャーミングなポルトガル人を永遠にリスペクトしたとしても、あのロマン・アブラモビッチが前言を撤回するはずがない。

 ひとつの時代は終わった。チェルシーはアブラム・グラント新監督、アシスタントコーチのヘンク・テン・カーテのもと、リスタートのときを迎えた。

 しかし、依然として首脳陣に対する不満が噴出している。

「難しい言葉を多用するし、哲学者ぶっているけど、グラントの練習は時代遅れだ。コーンの間をドリブルするなんて、10数年ぶりだったよ」

 ドログバが首をかしげていた。独創的なトレーニングメニューで選手の興味を持続させたモウリーニョと異なり、グラントの方向性は単調だ。基本の反復は大切だが、なぜモウリーニョが選手のハートをつかんだのか、研究していかなくてはならない。

 また、テン・カーテは練習中に笑顔を見せた選手を「ヘラヘラするな」と叱責したという。みずからの立場を誇示したかったのかもしれないが、選手たちの中にも、今回の人事に関してデリケートになっている者は少なくない。今は高飛車に構えず、ある程度は自主性にまかせるべきだろう。モウリーニョをしたう選手たちを刺激するべきではない。

乖離する、フロントの思惑とサポーターの心情
 ただ、いずれはテン・カーテが実権を握るのだろう。強化担当のフランク・アルネセン(反モウリーニョの急先鋒だった)とともに、チェルシーを新しいカラーに染めるはずだ。そして彼らのターゲットが、その人脈からオランダであることは明白だ。テン・カーテはアヤックス・アムステルダム、アルネセンはPSVアイントホーフェンと独自のパイプを築いている。

 すでに来年1月にはクラース・ヤン・フンテラール(アヤックス)の入団が確実といわれ、来シーズンの新戦力としてヨニー・ハイティンハ、ヘドヴィヘス・マドゥロ(ともにアヤックス)、ジェフェルソン・ファルファン(PSV)などがリストアップされたようだ。

 オーナーのアブラモビッチに人事を託されているのだから、テン・カーテもアルネセンもみずからの人脈を利用すべきだ。モウリーニョに忠誠を誓ったドログバ、R・カルバーリョ、ランパード、パウロ・フェレイラなどが反旗をひるがえしたとしても、妥協するべきではない。組織の構築は上層部と監督の責任である。

選手からの不満が噴出するのみならず、モウリーニョを支持するサポーターは多い。彼らを納得させるのも新首脳陣の役目だ。
(C)Second Wind
 しかし、サポーターの反感を買っている事実だけは認識しておく必要がある。こんにちのチェルシーを築き、夢のようなシーズンを提供したモウリーニョが政治力によって追われたことは、裏切り以外の何物でもない。

「モウリーニョ シンプリー ザ ベスト」

 本拠スタンフォード・ブリッジに掲げられるバナーこそ、チェルシーサポーターのいつわらざる心境である。アブラモビッチ派は、覚悟ができているのだろうか。

 過去から逃げるすべはない──。

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