たしかにおおごとなのかもしれない。聖なる国のフットボールリーグが、“外資”の標的になっている。マンチェスターU、アストン・ビラ(ともにアメリカ)、チェルシー、ポーツマス(ともにロシア)、ウェストハムU(アイスランド)、フラム(モロッコ)に続き、イングランド屈指の名門リバプールにもアメリカ資本が参入する。
「これはゆゆしき問題です。イングランドともあろうものが……」
したり顔の日本人メディアも眉をひそめていた。でも、ちょっと待ってくれないか。とりあえず、英国の経済事情を取材してからコメントしよう。外資を“はげ鷹”と称し、偏見と不当なほどの規制がまかり通る日本に比べると、英国は非常に寛容だ。もちろん、買収先の良し悪しが判断できない無能なフロントもいるだろう。あるいはM&A(企業の合併および買収)に嫌悪感が先立つ、時代遅れの重役も少なくないはずだ。
しかし、なぜ外資がプレミアシップに目をつけたのか、という重要な部分を読みとく必要がある。最大の理由は英国の好景気だ。先ごろ、海外放映権料で6億2,500万ポンド(約1,375億円!)という天文学的な数字の契約が成立したように、プレミアシップは絶頂期を迎えている。ユナイテッドのグレイザーファミリー、ビラのランディ・ラーナー、リバプールのトム・ヒックス、ジョージ・ジレットなど、プレミアシップを投資の対象と考えるアメリカ人のオーナーたちにすれば、いまが買いどきなのである。投資ではなく、使途不明金の追及から逃れるためにロシアからやってきた(?)ロマン・アブラモビッチ(チェルシー)の影が薄くなるほど、アメリカ勢の台頭は著しい。
侮ってはいけない、大衆の愛国心
おそらく、この流れはまだまだ続くに違いない。すでにニューカッスルU、トッテナム・ホットスパーなどに興味を示す外資が現れている。そして彼らは、現場の方向性にも介入するはずだ。
カネを出しているのだから、オーナーたちにも発言権はある。ただ、サポーターの気持ちだけはくみ取るべきだ。必要以上に外国人を補強してはいけない。ユナイテッドの本拠オールド・トラッフォードは、常に7万5,000人以上の観衆がつめかけている。彼らはポール・スコールズ、ガリー・ネビル、ライアン・ギグスといったアカデミー出身の選手をリスペクトし、ウェイン・ルーニー、リオ・ファーディナンド、マイケル・キャリックなど、イングランド代表のスターを懸命にあと押しする。
また、ビラとウェストハムがメディアの人気を集めるのは英国系のタレントを数多く擁しているからであり、チェルシーで歓声が集中するのはジョン・テリー、フランク・ランパード、そしてジョー・コールだ。さらに、いまでこそ“外人部隊”と揶揄されるアーセナルにしても、18歳以下のカテゴリーには明日のイングランド、スコットランド、ウェールズを支えるに違いない若手が、日々その才能を磨いている。
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投資家たちの目論見が成功するかどうかは、生活とフットボールとが密着している一般のサポーターの心情が理解できるかどうかにかかっている。
(C)Maurizio Borsari |
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サポーターが“魂”を売ったわけではない。彼らの生活とフットボールは密着している。英国系のベテラン、若手とともに一喜一憂し、勝利に叫び、敗北に気を落とす……。この、ストレートな心情を、外資系のオーナーたちは理解できるだろうか。彼らには発言権と経営権がある。しかし、英国人とフットボールの良好な関係を壊すような強権を発動したと仮定しよう。その瞬間、投資は失敗に終わる。大衆の愛国心を侮ってはいけない。
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