ホンダは、1月23日のバレンシアテストでルーベンス・バリチェロの操縦でRA108をシェイクダウン。29日にブラックリーのファクトリーで正式に新車を発表した。
ホンダは、昨季のRA107で独自の空力追求姿勢をさらに進めたが、大失敗に終わった。ブレーキングで車体の姿勢が前下がりに変化すると、ダウンフォースの発生中心(CP=Center
of Pressure)が大きく前寄りに動いてしまい、リヤのダウンフォースが大幅に抜けた状態になってしまった。そのため、RA107はブレーキング時にリヤが暴れてスピンしやすくなるうえ、姿勢が絶えず激しく変化するため、ドライバーには予測がつかず、こわくてコーナーに飛び込めないマシンになってしまった。さらに、姿勢変化による空力への影響を小さくしようとすると、ダウンフォースの発生量自体も小さくなるというジレンマにも陥っていた。
長期的視野のもと準備されたRA108
 |
 |
 |
ブラウン代表の影響力が発揮されるのは、まだしばらく先となりそうだが、浮沈の鍵を握るのはこの人以外にいない。
(C)Honda |
|
RA108は、このRA107での問題をなくして、姿勢が変化しても「有効に使えるダウンフォース」を獲得できるマシンにしようとしたという。
RA108は、ノーズ先端が高く、その後方のアッパーアームつけ根のカバーや、ノーズ脇のウィリアムズ風カメラカバーなど、車体後方へより良い気流を導くためのくふうをしている。そして、サイドポンツーンの前には、従来の小型ディフレクターを排して、フェラーリ風の大型バージボードを装着した。この大型バージボードへの転換は、ホンダが昨年、空力部門の人材補強を行い、RA108の空力設計で大きな転換を図ったことに象徴している。実際、大型のバージボードのほうが、姿勢変化の影響を受けにくいと言う説もある。
サイドポンツーンも、RA108では下側の絞り込みを初期段階からしっかりと採用している。一方、サイドポンツーン上のポッドウイングとチムニーは、マクラーレン風の一体フェンスをやめて、それぞれ独立した形に戻している。このボディと空力については開幕までにさらに変更を加えるというが、他チームと比べるとやや時代遅れのものに戻ったように見える。
 |
 |
 |
実戦からは引退したブルツだが、サード&リザーブドライバーに。彼の開発能力はホンダにとって大きな力となるだろう。
(C)Honda |
|
前述のように昨年、空力など技術部門を大幅補強したとはいえ、それが機能したのは、RA108の設計途中の時期だったはず。そのため、RA108では、多少、時代遅れなところを見せても、まずは基本に戻って、ベースとなる安定した空力性能を出そうとしたのだろう。なお、ホイールベースも数値は公表されなかったが若干延長して、コーナー入り口での安定性向上をねらっている。
29日にイギリス・ブラックリーのファクトリーで行われた新車発表会では、RA108の新たなカラーリングも公開された。環境に配慮した'My Earth Dream'のコンセプトと活動は継続されるが、白とアースカラーのよりシンプルなカラーになった。また、白の部分にはわずかに赤の配色もあり、60年代後期のホンダF1も思い起こさせる。
テストの結果は、バレンシアもバルセロナも芳しくない。しかし、ホンダにとって今季とRA108は、大敗から立ち上がる第一歩であり、来季への足場固めという、長い目で見たもののようだ。
スーパーアグリへの支援体制に変化はあるのか
 |
 |
 |
F1を取り巻く政治的問題の影響もあり、今後の体制が固まらないスーパーアグリは、パートナー探しに苦心している。
(C)SAF1 |
|
ところで、RA108の発表の直後、ホンダ レーシングF1のニック・フライCEOは、スーパーアグリF1のドライバーについて、「フィードバックができるドライバーを望む」と発言した。さらにロイターは、同CEOが「デビッドソンの確保を望む」旨を発言したとも報じた。
これとほぼ前後して、インドからは、インドの企業共同体、スパイスグループがスーパーアグリF1の株式買収交渉に入ったという報が流れた。それによると、A1GPのインドチームのプロモーターである同グループが、スーパーアグリF1の負債4,700万ドル(約50億円)を引き受ける代わりに、チームを1ドルで買収するという噂があるという。
この具体的数字については推測の域を脱していないし、実際に株式の何%を取得するのかもはっきりしていない。だが、A1GPのインドチーム代表でもあるアンダレーブ・セーガル氏は、「まだ結論に至ってはいない」としながらも、「目下2チームと交渉中で、そのひとつがスーパーアグリだ」と名言している。スーパーアグリF1チームのマネージング・ディレクター、ダニエーレ・アウデットも、複数の相手から、株式の部分受け入れによる資金提供の話があることを明らかにしている。このスパイスグループの背後には、A1GPインドチームとの関係からインドのタタ財閥が控え、F1参入の際にはナレイン・カーティケヤンの起用を条件にしてくると見られている。フライCEOの発言は、こうした動きを受けたものだったのだろう。
一方、昨年12月の年末社長会見の直後、ホンダの福井威夫社長はスーパーアグリF1の支援について、「エンジンとギヤボックスの提供は継続する」としながらも、「いつまでも支援はできない」として、財政面の援助については期限があると発言した。このことは、昨年、メインスポンサーだったはずのSSユナイテッドからの支払いが滞り、連鎖的に財政難になったスーパーアグリF1にはきびしい響きだったに違いない。そして、チームは部分的な株式譲渡を含めたパートナー探しにさらに力を入れたようだ。
これでスーパーアグリF1の「日本のチーム」と「鈴木亜久里代表」というスタンスに変化が出るのではないか、と危惧する声もある。だが、ホンダのパワートレイン供給を含めた技術支援は、日本のチームと鈴木代表が前提であったはず。すると、新パートナーが来ようとも、新たなパワートレインを見つけないかぎり、現体制を維持する方向になるだろう。また、アウデットを筆頭に、F1の世界で渡っていく専門の知識と経験も現体制にはある。
新たなパートナーが増えることは、良いことではないだろうか。かつてアロウズは、日本のオーナーを迎えて資金を得て、チーム名を一部変えても、実質的な運営権はアロウズ側がほとんど握っていた。こんどは、逆に日本のスーパーアグリF1チームが海外からパートナーと資金を得て、実務はしっかり握る体制をとっても良いのではないか。これもF1の戦い方のひとつだ。もし実現したら日本のF1史上初のことだ。また、スーパーアグリF1が、インドとパートナーシップを結ぶことは、ホンダにとってもインドという大型市場での二輪、四輪の販売でより有利になる可能性もある。インドには、日本企業が注目する、開拓途上の大マーケットが控えている。インドでの市場アピールを期待した日本からの新規スポンサーもとれるかもしれない。
この件はまだ進行中で結論に至っていないが、むしろ前向きにとらえながら見守ることができるかもしれない。
|