今回はプロレスの未来を探るべく、プロレスという世界に身を投じつつもある意味斜め目線で業界を見守っていらっしゃる現役プロレスラーであり、 TBSサンジャポ朝青龍専属ジャーナリスト、お父様は先代高砂親方(元小結・富士錦)という相撲セレブにして元・高校教師とよくわからない経歴をお持ちの一宮さんにお話を伺いたいと思います!
「よろしくお願いします! 最近主流の暴露系ムック本に負けないくらいに今日は何でも話しますよ(意気揚々と)」
頼もしいです! さてさて、ユーザーに一宮さんとは何ぞや?という方もいると思いますので、ザザッとプロフィール的な質問から入りますが、先ほども言いました通り一宮さんは先代高砂親方の息子さんなんですよね?
「そうですよ。今の高砂親方の朝潮さんの前の人の長男です」
高砂ブランドって相撲界じゃかなり高名な親方株だと思うんですけど、またなぜプロレスの方に?
「小学校のときにですね、父親が親方業をやりつつちゃんこ鍋屋さんを経営していたんですよ。そこの店によくラッシャー木村さんがいらっしゃいましてですね、その出会いが思えばプロレスの入り口ですね」
当時の木村さんって国際プロレスですよね?
「そうなんですよ。チェーンとか金網とか有刺鉄線だとか、もうアイテムプロレスですね」
新日本と全日本の2代巨頭が完全に業界を牛耳っていた時代に国際は異色だったというか……。
「そこらへんに睨まれると団体が丸ごと潰されるという時代ですよ。ただ、当時の業界の色とはあまりにも横道にそれていたプロレスだったんで、敵視どころか相手にもされてなかったんじゃないですかね。でも、ボクは入り口が国際ですし、ああいったきな臭いというか怪しいプロレスが子どもの頃から大好きになってしまって(苦笑)」
で、今に至ると(苦笑)。一宮さんは現在39歳ということで、小学校の頃はタイガーマスク全盛の時代なわけじゃないですか。そっちのほうは?
「まったくいかなかったですね。もちろん、タイガーとかミル・マスカラスだとかを観て『飛んだり跳ねたりスゴいなぁ』って思いはあったし、アニメのキャラが現実にリングに上がるっていう事件は子どもながらに衝撃的でしたけど、ボクの体はもう完全に国際プロレス派になっちゃってました」
またなんでそこまで(笑)
「当時国際はテレビなんかでやってなくて、木村さんに招待してもらって生観戦ばっかりしてたこともあると思うんですよ。生の迫力にヤラレたって感じですね」
しかし、小学生で国際プロレス派ってシブいですね。ラッシャー木村を筆頭にマイティ井上、アニマル浜口……。
「寺西勇に鶴見五郎、マッハ隼人にサンダー杉山に大位山勝三と、小学生時代にキン肉マンを読む代わりにさいとうたかを先生の劇画アクション漫画を読んでるみたいなもんですよ」
たしかにあらためて名前をあげていくと見事なまでに劇画タッチなレスラーばかりですよね(笑)
「スター性が少しも垣間みれないですよね。国際プロレスが好きどころか知っている子どもなんて周りにひとりもいなかったですよ。ちびっ子プロレスごっこみたいなことを友だちとやっているときも、他の友だちはタイガーマスクの派手な技とか猪木さんのコブラツイストなんかをやるんですけど、ボクといえば手四つからグイッとヘッドロックで頭を締め上げたりとか」
アハハハハ! かなりいぶし銀な滑り出しですね。
「猪木VS木村が実際に行なわれる前にすでに何度もやってましたからね。ドロップキックなんてのはボクにとっちゃメインイベントでしか出しちゃいけない大技ですからね」
まるで無我みたいですね! で、その後もプロレス一辺倒?
「中高は野球をやっていてたせいでプロレスから少し離れちゃうんですけど、肩を壊してからまたプロレスに戻りましたね。肩を壊して野球が出来なくなった時期に、先生から指導者の道をってことで日本体育大学を勧められたんです。で、体は人一倍大きかったんで、柔道部やなんかに借り出されて、そのときに人を投げ飛ばすとかがおもしろくなったんですよ。で、格闘技色の個人競技に興味がわき始めて、実家が相撲部屋なわけですから相撲がいいかなと」
相撲は大学から?
「そうですね」
さすがに相撲のサラブレッドでも、いきなり大学相撲はキツかったんじゃないですか?
「いや、それが大学2年のときに東日本体重別選手権で準優勝、2位になっちゃったんですよ(苦笑)」
おぉ! スゴいじゃないですか!!
「『もしかして相撲でいけるかなぁ』ってのはちょっと思いましたね。家は相撲部屋だったんで、家でも稽古がかなりできるんですよ。でね、若い人と練習するんですけど、そのときすでに幕下くらいの力士相手だと対等に稽古ができちゃって」
力士を本格的に目指そうとは?
「いや、夢はすぐに潰えましたね。今でいうとですね、『もしかして、八百長も視野に入れて星何番とかを計算してやればいけるんじゃないか!?』って正直そんなふざけたことを思ってたんですけど、八百長なんてものは少なくともその当時はホントに100%一切ないわけですよ。でね、そんときにと高砂部屋にいた相撲取りで関取って誰っていうと小錦と水戸泉だったんですよ。幕内力士にはね、学生相撲でやってるテクニック頼りの相撲がまるっきり通用しないんです」
プロとアマの違い?
「土俵でお米を稼いでる力士の気迫っていうのは技術や強さじゃなくて、もう壁なんですよね。稽古していく内に『こんなのが上にいたら絶対関取にはなれないぞ……』って。で、その頃って丁度世間は若貴フィーバーで二世力士がもてはやされていて『こんな時期にオレが出ちゃったら名門高砂部屋の名前を汚してしまう』って思って、各界入りは辞めました」
そこまで思わせてしまうほど相撲界の現実は厳しかった?
「通用するには難しかったですね。で、教員免許を取って高校の教師になるんですけど、ぶっちゃけ高校の先生というより相撲部の顧問という色のほうが強かったですけど(苦笑)」
高校教師という職業からまたなぜプロレスに?
「相撲部も2年で全国レベルにまで強くしたりと頑張ってたんですけど、4年目くらいかな、学校側が体育コースを廃止して受験校にシフトするという方向になってしまったんです。そんな時期を同時期にとある方から天龍源一郎さんを紹介されまして、その頃天龍さんはWAR(レッスルアンドロマンス)を旗揚げされたばかりで『プロレスをやってみないか?』って話になって」
で、そこで決心した?
「もうスパッと教師の道は切りましたね。まぁそんなに知らない世界じゃないし、ぶっちゃけ家が家なものですから『相撲界のタニマチも自分に付いてくれるだろう』とか、そんな甘い考えもあったんですけどね(苦笑)」
20代後半でプロレス業界に、しかもレスラーとして両足を突っ込むってキツかったのでは?
「そりゃキツいですよ。準備や覚悟なんてできてないわけですし、そんなものを『プロレスが好き』っていう気持ちだけでカバーしてるわけですから」
その“好き”っていう気持ちは実際にリングに上がって闘いたいというものなのか、それともただ単に憧れみたいなもの?
「闘いたいって気持ちですね。当時は現役を保っていたいっていう理由で、相撲で国体にずっと出場してたんですよ。体重も120キロくらいあって、WARは相撲上がりも多くて、仲良しなヤツらもたくさん所属していたんで、ここでのプロレスだったらなんとかなるんじゃないかって、これまた甘い考えがあったんですけど(苦笑)」
これまた現実は厳しかった?
「あの当時のWARで新参者はキツいですね。プロレス界の洗礼は一通り受けたつもりです。一番キツかったのは入門したとたんに天龍さんが話してくれなくなったんですよ」
入門するまではタニマチみたいなものだったのが、その瞬間から弟子ですからね。
「にしてもいきなりですよ。それまではいっしょによく飲みにとかも行ってたんですけど、それもまったくなくなって、当時の教育係だった平井(伸和/現・全日本プロレス)とかそのへんのレスラーに鬼のようにしごかれましたね。毎日腕立て腹筋スクワットですよ(苦笑)」
でも、もうやるしかないですもんね……。
「やるしかないというか、もう逃げられない状況と言った方が正しいですね(苦笑)。とにかく食らいつくことしかやることがないんで、毎日毎日食らいついてたら、とある日、天龍さんが『リングに上がれ!』っていきなり」
次は受け身ですか?
「ですね。でも、受け身に関しては柔道や相撲でかなりやってたんで、ちょっとした先輩レスラーよりもちゃんとできたんですけど、それが気に障ったのか、さすがに受け身100連発とかはキツかったですねぇ」
受け身100連発って……、頭がおかしくなっちゃうんじゃないですか?
「オレはお前らと違ってもう30近いんだから勘弁しろよって思いながらやってましたね。そっからはもう早かったですけど」
トントン拍子でデビュー?
「その年(1997年)の3月に教師を辞めて、4月に入門して7月にデビューって感じでしたね。ただ、プロレスは全然できないわけですから、とにかくデビュー戦までなんとかしろってことで、格闘技っぽい動きを全部覚えろってことで」
格闘技っぽい動きを必死に練習してたんですか(苦笑)
「ですね。当時、石井(智宏/現・リキプロ)と練習してたんですけど、もうアホみたいにね、限度なんてわからないものですから全部が全力ですよ。組んで相手をひっくり返すってムーブだけであばらを折ったりしてましたから」
地下プロレスじゃないんだから(笑)
「ホントそんな感じですよ! 当時の日本のプロレス界で一番ガチな練習をしてたんじゃないですかね(笑)」
練習だけで満身創痍だったわけですけど、そんな体でデビュー戦は勤まったんですか?
「手加減が全くわからないファイトに終始しましたね。ただ、実際やってみたら『試合ってこんなもんなのか』って思いましたね。感動したのは違うところかなぁ」
感動した部分とは?
「ボクはですね『相撲から入ったプロレスラーって50過ぎてもなんで引退しないんだろう』ってずっと思ってたんですよ。その理由が実際にリングに上がってみてわかったんですよ。やっぱり華やかですよね、プロレスは。あの入場を体験したらもう辞められないですよ。例えば相撲って力士個人個人の入場なんてないじゃないですか。でも、プロレスはスポットライトを貰えて、自分の曲が流れて、会場のお客さんがその瞬間全員自分のことを見るわけじゃないですか。これは相撲から入った人は絶対に辞められないですよ」
まさにリングは麻薬?
「その通りですね。相撲みたいに終わりがけにゾロゾロやってくるんじゃなくて、会場にそれなりの人数が入っての第1試合じゃないですか。デビュー戦は気合いが入りましたね!相手と張り合いになったんですけど、相手にパーンと張られると会場がワッと盛り上がるんですよ。で、『よしドンドン受けよう』ってなって思ったより冷静にプロレスっていうものをリング上で分析しながら、お客さんの反応を見ながらやれましたね」
スゴいじゃないですか、デビュー戦から周りが見えてたってことですね!
「もうとにかく好きなことをやれって言われてたんで、第1試合、しかもデビュー戦でありながらドラゴンスクリューとかトペとかやっちゃいましたからね(笑)」
気持ちがよいプロレスデビュー戦ですね! そこからも順風満帆に?
「……、知ってるくせに。ここからでしょ、インタビューの本筋は?(苦笑)」
まぁ、そうですね(笑)
「基本的には楽しくやれてたんですけど、天龍イズムっていうのは『痛みの伝わるプロレス』っていうものなわけで、当時のWARの選手ってもう日常的に顔なんか真っ赤に腫れちゃってるわけですよ。そういうのをお客さんも喜んでくれていたからなんだろうですけど、ボクはちょっと違うかなぁと。プロレス感の違いを感じ始めましたね」
まぁ、斬った張ったがWARの醍醐味ですからねぇ。
「やはり木村さんのマイクパフォーマンスで会場を沸かしたりするようなね、お客さんのニーズに合わせて喜んでもらうという理想のプロレスがねぇ」
ぶっちゃけまったくなかったと。
「まったくなかったですね。第一試合から最後のメインまでがガチガチですから。あの伝説のど真ん中団体WJの記念すべき旗揚げ試合のようなプロレスですよ。まぁ、WJと違って帰っちゃうような人はいませんでしたけど」
アハハハハ! しかしどうやって心を抑えたんですか? だんだん溝も深まるだろうし。
「まぁ心を抑えて頑張ろうって思う前にWARは木っ端みじんに崩壊しちゃいましたからね。ボクが入団して1年ちょいですよ」
崩壊の流れはすでにいろんな媒体や暴露本っぽいムック、関係者の談話なんかで世に出てはいますが、全部解せないんですよ。一宮さんの口からあの当時の話を伺いたいんですけどねぇ。
「う〜ん……、まぁ今だから話せる話もあるにはありますが」
今だから話せるなら話しちゃいましょうよ!
「(数秒考えて)実はですね、WARが崩壊する数ヶ月も前に、天龍さんから『章一、お前WARを買わないか?』って話をいただいたんですよ」
えぇ!? 天龍さんからデビュー戦を終えて間もない新人選手にですか?
「まぁ、ボク個人というよりボクの実家、つまり高砂部屋の体力を見込んでだとは思うんですけど、とにかくそういう話を頂いて、正直ボクは買う方向で動き始めたんですというか、買うんですよ、WARを」
買っちゃったんですか! い、いくらで?
「ズバリ●●円ですね。もちろん一括でなんてお支払いできないので、いろいろ工面しながら。世田谷のとある場所でお金も渡して、興行売り上げの何パーセントかをギャランティとしていただけるとかそういう話も詰めて」
だ、誰も止めなかったんですか?
「止める人ばかりでしたね。それだけ資金を調達できるならWARは買わないで自分の団体を立ち上げてそこに天龍さんを呼んだ方がいいんじゃないかって」
その通りだと思いますよ!
「WARって名前が欲しかったっていうのも正直なところですね」
しかしマジですか!? いやいやマジなんでしょうけど……、つまりWARの晩年は一宮さんが天龍さんを雇ってたことになりますよね。
「ですね、だってWARのオーナーですし、雇ってる側になりますよね。でね、こうなったらWARをボクが立て直して経営を軌道に乗せないといけないわけじゃないですか。これ、言っていいのかなぁ(苦笑)」
ボクら的には何の問題もありません。一宮さんがよろしければ!
「ボクはやっぱり相撲関係には強いわけで、そのときもプロレスをやりながら当時横綱だった曙さんのマネージャーをやってたんですよ。でね、入団をほぼ取り決めて、実現の運びにまで持っていったんですよ」
は!? 今の話ってあのとうじ噂に上がってた曙のWAR入団ということですか?
「はい(キッパリ)」
えぇぇぇぇぇぇ!! あれって噂じゃないんですか?
「曙さんがK−1に行ったときって2003年で引退後ですよね、このときは1998年なわけですし、曙さんが現役バリバリの横綱のときですからね。あともうふたり入団することがほぼ決定してたんですよ」
曙の他にふたりですか?
「はい、戦闘竜さんと力王さんですね」
えぇぇぇぇぇぇ!!
「これ言っていいのかなぁ……、WAR崩壊翌年の新日本の新春恒例の1/4ドームがあるじゃないですか。そのときの目玉って長州力VS大仁田厚だったじゃないですか。でも、あれってホントは長州VS曙だったんですよ」
ま、マジっすか!?
「曙さんの入団契約金が●●●●万だったんですけど、当然ボクは●●円をすでに背負ってるわけですから右から左に●●●●万を動かせる体力はさすがになかったんですよ。なのでWARが払えない曙さんの入団金の一部を新日本に出していただいて、1年間は新日本限定でゲスト参戦するという決め事まで締結してたんですよ」
スゴい話ですね……。
「ワンマッチ●●万っていうところまで決まってましたよ。シリーズで計算したら十分ペイできる値段ですよ。ちなみに戦闘竜さんの入団金は●●●●万で力王はそれよりちょい少ないくらいかな」
……、もしその大構想が実現してたら今頃は新日本とNOAHのニ大巨頭じゃなく新日本とNOAHとWARの三大巨頭時代だったんじゃないですかね?
「絶対にそうなってたと思いますよ。ただ、契約面なんかも超極秘のままトントン拍子に進んではいたんですけどねぇ」
曙もやる気だったんでしょ?
「今、曙さんはハッスルしてるじゃないですか。もう本人はその当時からプロレスをスゴくやりたがってたんですよ。先ほども話に出ましたけど、K−1に行ったときってたしかに衝撃的でしたけど引退後じゃないですか。そのときの商品価値っていったらもう全然上ですからね」
1999年に曙のプロレス転向が決まっていたらそれはもう大事件ですよ! でも、なぜ頓挫しちゃったんですか?
「やはり、WARのお金と曙さんとかのお金を足したらものスゴいお金になるわけじゃないですか。『こういうプランがあるんです』って大々的に営業することができればスポンサーも付いたんでしょうけど、話が話だけにひとつも漏らさずにお金を集めなくてはいけないというジレンマがあって……」
ひとつも漏らさなかったんですか?
「漏らさないし、漏れなかったですね。しかもボクなんてこの業界に入ってまだ1年目なわけじゃないですか。この業界はご存知の通り異常にめんどくさい業界ですから根回しって重要なんですよ。でも、その当時のボクはそんなの一切せずに話を進めちゃってたんですね。で、なんだかんだでいろんな圧力が働いて、この話は消えちゃったんですよ」
ぶっちゃけ、そんなミラクルな実弾があったからこそWARを買うという無謀な行為に……。
「それは多いにありますね。で、結局ボク個人で5000万くらい借金してしまって『あぁ、やっちゃった』みたいな(苦笑)」
そのままWARも崩壊して、残ったのは借金だけだったと。
「返済なんて無理だって頭を抱えましたよ。プロレスだけでそんな大金稼ぐなんて絶対できないってわかってましたし、もうこの先どうしようかと」
ぶっちゃけ、どうやって返したんですか?
「曙さんのマネージャーをやってたって言ってたでしょ、ちょうどそのとき曙さんの引退興行をどうしようかと話し合ってて、当時の曙さんは個人の後援会なんかがなかったんで、引退相撲をどういうイベントにしようかと、どう盛り上げるかっていうのがあったんですよ」
引退相撲って相撲協会が仕切るんじゃないんですか?
「これもあまり知られてない話かもしれないですけど、力士の引退興行って個人興行なんですよ」
えぇ! そうなんですか!?
「そうなんですよ。だから両国国技館を借りて、そこで何をするかっていうのも全部力士側で企画するんですよ。で、いろいろとアドバイスしていて、興行を盛り上げるためにテレビにドンドン出演しましょうってなったんですよ」
当時の曙はバラエティーみたいな番組にはあまり出ませんでしたもんね。
「いろんなとこに出演してアピールしましょうよってことですね。でね、その頃の曙さんのギャラが●●●万とかだったんですよ。ボクはマネージメントをかって出て……、これ言っていいのかなぁ?」
それは一宮さんのほうで決めてください(笑)
「まぁ今だから言えるんですけど、曙さんには●●●万ですって言って、差額はマネージメント料として頂いちゃいまして、その金額を全部借金返済に充てたんですよ」
アハハハハ!
「いやぁもうすぐに返済できちゃいましたね。5000万返すのに1年かからなかったですから(苦笑)」
かなり抜いたんですね(笑)
「いやぁホントに助かりました。曙さんがもうマジで神様ですよ」
強烈すぎるプロレス1年生時代なわけですけど、借金問題が解決した後、またプロレスに戻ってくるんですよね。
「WARの問題が落ち着いた頃にまたプロレスがしたくなってきたんですけど、ボクのネームバリューじゃプロレス団体からなんてお呼びがかからないわけですよ。でも、ボクには相撲界をはじめとするブレーンがいるし、チケットを売れる能力もあったんですよ。なのでチケットを伸ばす能力のあるレスラーが重宝される団体ならボクが行ったら喜ぶんじゃないかって思って」
で、IWA-JAPANに乗り込むわけですね!
「そうなんですよ。WARは崩壊してプロレスはもう諦めてたんですけど、曙さんの関係で新宿二丁目に飲みに連れて行ってくれる方がいて、そこでIWAの浅野社長と面識を持ったんですよ」
浅野社長にはなんて?
「『もしよかったらうちの看板になってくれないか』っていうような感じでしたね。まぁ自分なりにフリーとしてどうやって動いてかなくちゃいけないのか、フリーの選手ってどういう風にしていかなくちゃいけないのかとか、なんでもかんでも相手の言いなりになっていたらやっぱり都合のいい選手になっちゃうし、今後第一線で活躍してかなくちゃいけないからっていう部分も考慮して、まぁプロレスは昔から見てたんで、乗り込むならどういう風に乗り込んでどういう結末が迎えられるかっていうのはわかってたんで、IWAにお願いをしてやらしてもらったと」
しかしまた問題がねぇ(苦笑)
「中堅どころの、第3〜4試合を盛り上げるヒールでデビューできて、まぁまぁ手応えもでてきて自信がついてきた矢先に偽造免許で捕まっちゃうんですよね」
けっこうヒステリックな記事で報道されちゃいましたよね。
「えぇ、とにかく赤旗と聖教新聞以外には全部載りましたね」
アハハハハ!
「別に免許証を偽造したわけじゃないんですよ、勘違いして偽造された免許を使ってただけなんで、有印私文書行使っていう罪なんですよ、ホントは。でもプロレス的にいけば“偽造”のほうがわかりやすいだろうってことで(苦笑)」
プライベートでもプロレスしないとプロレスラーじゃないですからね! で、この偽造事件から偽造レスラーの道に突き進む?
「これはギミックに使わないともったいないし、シャレにもならないって。ただ、当時のプロレス界って“ものまね”的なこと、人の技やなんかをやるのは御法度だったんですよ。でも、“偽造”ってい部分を冠にしてやればなんとなく許してもらえるかなという甘い考えで(苦笑)。なので最初はヒールの格好で誰かの選手の技を露骨に取り入れてやってただけなんですよ、ヒップアタックするときは『越中!』って叫んでみたり、そんなことくらいしかやってなかったんですよ」
それがいつから偽造対象レスラーのコスチュームまで特注するという本格派に?
「えぇ。ただ、この事件で相撲関係の人にも迷惑をかけましたもので、もうあっちのほうには戻れないなって気持ちがあってですね、この事件がボクをプロレス1本でやっていくという決意のきっかけになったのは事実ですね」
一番最初に偽装したのって?
『長州さんですね。長州さんの偽造ではたして1試合通せるかっていう自分への挑戦だったんですけど、やはり格好は長州さんなのに技が武藤さんだったりとかになっちゃって、そういう部分でものスゴく葛藤がありましたね」
プロフェッショナルですね。あらゆるレスラーを偽造してリングに上がられるわけですけど、コスチュームや髪型、メイクや細かいムーブまでのこだわり方がハンパじゃないじゃないですか。レパートリーって?
「長州さん、天龍さん、高木三四郎、越中さん、ポイズン(澤田)、ブッチャー、橋本さん、上田馬之助さん、三沢さん大仁田さん、武藤さん……、まだまだいますね(苦笑)」
スゴいですね!
「まぁ、ものスゴく地味な作業の上に成り立っているんですけどね。雑誌の写真を拡大コピーして、切って貼って塗っててみたいな」
ゴージャス松野さんとの絡みもこの頃からメディアを賑わせましたよね。
「サンデージャポンで毎週のように放送されましたしね。あれは恵まれたなぁって今でも思いますよ。でも、そのボクの立ち位置ってほんとはターザン後藤さんの位置だったんですよ」
え!? そうなんですか?
「えぇ。松野さんとの展開が始まるちょっと前にですね、後藤さんがダブルブッキングしちゃっていて、IWAの試合に穴をあけたんですよ。で、その穴をボクが埋めることになって。で、程なくしてボクが松野さんと絡むことになったと」
それは後藤さんもヘタを打ちましたね。しかし、当時の松野さんはド素人なわけじゃないですか、一宮さん、けっこうハードヒットでしたよね。
「浅野社長からアドバイスを貰っていて、やっぱり相手が素人といえども絶対に手を抜くなってことで。体が出来ていない素人にプロレスラーがやられるのは絶対におかしいということで、松野さんには特にカタくいってましたね」
松野さんがやられればやられるほど観衆は沸きましたよね。
「ですね。構図的には松野さんがベビーフェイスなんですけど、お客さんの内心では完全にヒールなわけですよ。『もっとやれ一宮!』的な空気が会場にも充満してましたから」
松野さんとの絡みがきっかけで一宮章一の名前は全国区になったといっても……。
「全然その通りですよ。ただ、その当時は新聞でもプロレス欄には掲載されずに芸能欄ばかりで(苦笑)。これは松野さんとも『これでいいのかな』って。単にボクは松野さんをいじめ抜くプロレスラーで、松野さんはどれだけプロレスに対して真意に接してもアレですからねぇ」
ちょっと不満もあった?
「いや、不満はないですよ。なんだかんだ言っても一宮章一とゴージャス松野のアングルってプロレスじゃ名アングルのひとつだと思いますし、どんな形であれボクの名前が世間に出ましたから感謝してますよ。ただねぇ……」
浅野社長ですか?
「そうなんですよ。なんでなんでしょうね、ひとつのラインが上手くいきだすと……、ジェラシーとでもいうんでしょうか」
『ちょっと! あんたたちばっかり目立って私はどうなってんのよ!!』的なですか?(苦笑)
「はい(苦笑)。結局ですね、テレビのほうはぶっちゃけ『松野さんと一宮さんさえいればそれでいい』というスタンスなわけですよ。でも、浅野社長は『ここまで協力してるんだから私にも誠意を見せなさいよ!』となる。で、一般にも興味を持ってもらえるほどものスゴくスイングしてるアングルなのに会社的には『もうダメよ!』ってNGになっちゃって、どっちを選ぶかっていう状況になってしまい、まぁIWAからは出るしかないのかなと」
IWAよりTBSだと。
「まぁ普通プロなら誰でもそう選択すると思いますよ(苦笑)。IWAは好きだったし、ずっといたかったんですけどね」
大正解だと思いますよ。極上のアングルで団体を牽引してきたのに、神の一声というか、ジェラシーで一気に団体の不良債権に成り下がってしまったわけですか。
「あの団体はなんだかんだ人気が出て来ると最後は絶対にそうなっちゃうんですよね。でね、ボクのIWAでの最後の試合でですね、試合前に浅野社長に呼び出されて『もうあんたの試合なんてどうでもいいから1分で試合を終わらせてリングをおりなさい! 命令よ!!』みたいなことを言われて」
ありゃりゃ〜……。それってタイガー・ジェット・シン戦ですよね?
「そうです。まぁ言われちゃったものはどうしようもないですから、シンといかに1分で試合を終わらすかを相談してですね、結局リングインした瞬間にレフェリーをアタックして、ゴングを鳴らさせなくして、ボクがシンをガンガンに責め立てて一気にピンフォール! 3カウントを奪うんですけど肝心のレフェリーが失神してるんでカウントにならない。で、ガッチガチの試合に戻って、程なくしてレフェリーが復活してゴングを鳴らし、ゴング後速攻でボクがシンのチョークスラムでドーンとやられる。公式試合時間7秒という試合をやりましたね」
アハハハハ! 確信犯ですね(笑)
「リングをおりて浅野社長に『ご指示とおり1分以内どころか10秒以内で試合を終わらせました』って言いましたよ。ホントは10分以上やってるんですけど(苦笑)」
そのときの苦虫かみつぶしている浅野社長の顔が目に浮かびますねぇ。
「おもいきり無視されましたね。まぁシンはホントにいい人ですよ、ボクの内情をわかってくれてて、ボクの気持ちに付き合ってくれたわけですからね」
いい話ですね。で、IWAを去って、DDTに行かれるわけですけど、その経緯というのは?
「DDTに当時木村浩一郎ってプロレスラーがいたんですけど、彼がIWAに参戦していて、木村浩一郎に誘われたのがきっかけですね」
DDTは一宮さんが参戦された時期はすでにエンタメプロレスという見せ方を完成させていたと思うのですが、すんなりと入れましたか?
「高木三四郎というカリスマがいて、木村浩一郎という絶対的な強さを持つレスラーが君臨していて、ポイズン澤田という強さの対極にいるコミックなレスラーがいて、かと思うとMIKAMIみたいな華麗に飛べる選手がいてと、当時のDDTはこの4つのブランディングで確立していましたから、ここでこの4つを5つにするぐらい一気に対等できないとヤバいかなと思いましたね」
具体的な方法論は見いだせた?
「はい、もう速攻で。5つのブランディングにして、なおかつ頭一つそこから出すには何をどう見せなくてはいけないかということで、もう完全コスプレに走りましたね(笑)」
完璧なる偽造!
「ですね。ムーブはもちろん、コスチュームに関しても細かなデティールまで完璧に偽造しましたね。当時のDDTはクラブとかで興行を打ってたんでお客さんも近いんですよ。手応えも手に取るようにわかりますし、なんだかんだで初々しい団体だったんで、自由気ままにやりましたね」
一宮さんと高木三四郎の抗争でボクが一番好きなのはいちごの国からDDTを守るためにやってきたミスター・ストロベリーVSミスター・アメ偽カン(ハルク・ホーガンの偽造)あたりですね。
「ストロベリージャム軍団とフルーツバスケット軍団の軍団抗争の頃ですね(笑)」
ミスター・ストロベリーの正体を暴くために嘘発見器まで用意したり(笑)
「アハハハハ! あのへんは高木三四郎がほとんど考えてましたね。あの頃はもう選手全員が高木を支持して持ち上げて、もう完璧なピラミッドが出来上がってたんですよ。高木のプロレス頭に対する信頼感は絶大なものがありましたし、この団体は伸びるだろうなぁってずっと思ってましたね」
計算されつくしたアングルと強烈なキャラクター、そして一宮さんの参戦でDDTは後楽園ホールを満員にするまで成長していくわけですが、右肩上がりの団体を去った理由というのは?
「DDTの未来のことを考えてですね。2004年ごろだったかな、年齢的にも40代に近づいてきたんでそろそろ世代交代の時期かなと思い出したんですよ。世代交代は団体のこと、いや業界のことを考えたら必ずしなければいけないと思うんです。DDTはそのタイミングを失敗したと思いますね」
世代交代の意見が通らなかった?
「そうですね、高木三四郎が頂点でなければならないという団体でしたから。ボクは活きが良くて若いレスラー数人をトップ候補にあげていたんですけど通りまでせんでした。今のDDTって、ボクが抜けた頃からというか、4〜5年前とやってることは同じですよ。あのときうまく世代交代しておけば業界の盟主になりえたかもしれないと思いますね」
その点、新日本は着々とやってますよね。
「頑張ってますよね、棚橋と中邑で動員が生まれるところまで地道に育て上げてましたもんね。やはり新日本はなんだかんだで素晴らしいと思いますね。逆にですね、例えばDDTは何を思ったか団体内でコンセプトごとに団体を分けたでしょ? それってファンからすれば大変なわけですよ。今まで5000円で見れたものが数個に分かれてしまった。これじゃ客足は遠のきますよ。しかも、コアなプロレスファンだったらまだついてきてはくれますけど、一般により近い方、もしくは興味もない人がいたら団体が増えたこと自体わからないわけですよ。窮屈になるだけ!」
同じ釣り場に釣り座を何本立てても、魚の量を増やす事を考えなかったらドツボですもんね。
「その通りです。池自体を大きくしようと考える人もプロレス業界には少ないんですよ。しかも、その貴重な釣り場は日を追うごとにドンドン小さくなっていってるんですよ。なぜかというと、今プロレス会場には子どもがまったくいない(苦笑)」
ほとんどが脂ぎったプロレスファンですもんね(苦笑)
「少し前までは上はお年寄りから下は小学1年生までと、幅広く愛されて、世代の寿数珠繋ぎにもなってたわけです。でも今はある程度の年代で止まってます、下か育ってないんです。このままいくと10数年後会場は40代以上のみになりますよ」
子どもたちを会場に戻す事がプロレス界の急務?
「だとボクは心から思うんですが、今は子どもたちに求心力のある企画を組めないのが現状ですよ、子どもたちの求心力を得るためには一般の心をも掴まなくていけないと思うんです。ただ、資金がない。というかプールしてないんですよ。この業界、お金があるとまずレスラー同士で分けちゃうんです。その時点でもう無理ですよね」
ハッスルが伸び悩んでいるのも“プロレス界をぶっ壊す”的なスローガンで最初は飛ばしてはくれてましたが、実際はプロレスファンを相手にしていたところですよね。
「そうですね。後はもう芸能人の知名度頼りってことになっちゃってるんですよ。そんなやり方で一般にアピールしても、ワイドショーかなんかで、プロレスがただのゴシップとして消化されて、ジャンルという点では自分で自分の首を絞めているだけだと思うんですよね」
やはりプロレスラーが新聞やワイドショーの一面を飾るぐらいにならないと?
「猪木さんが過去に『プロレスラーはいい人じゃダメだ』っていうようなことを言っていたと思うんですけど、まさにその通りで、今のプロレスラーってみんな普通なんですよ」
あらゆる意味で規格外じゃないとダメ?
「身長が180センチ以上で100キロ以上でないとプロレスに入門できないみたいなものが今は完全に取り払われてるじゃないですか。しかも、今って一般出のアマチュアでやってる格闘家の人のほうがプロレスラーより強いかもしれないような印象を持たれてるでしょ?じゃあレスラーの強さって何ってとこなんですよね」
化け物的な印象はもはやなくなってしまっているかもしれないですね。
「そういうところでですね、例えばプロレスラーって普通の人と違うところってどこって言われたときに、焼肉30人前をペロリと食べますよとか、不摂生でも強いんですよだとか、スクワット1000回やってますよとかそういうことになるじゃないですか。でも、今はもう栄養を考えたストイックな食事、飲んでるのはプロテイン、もうプロレスラーが尊敬される部分ってそういうのすらないですよね」
一宮さんはそのへんを守ってらっしゃる?
「できることはやってますね。とある選手のファン交流会みたいなのがあって、その会に連絡なしで乱入して、焼酎をボトルごと一気飲みして、3本くらい会場にまき散らして、数万円を放り投げて帰りましたね。合計10分くらいで」
そこに来ていたとある選手のファンたちは一宮さんの奇行をプロレスラーのトンデモ行動として脳裏に焼き付けたことでしょうね!
「でしょ! そこにいたファンが『一宮はスゴい男だった』とか『危ない』だとか、そういう風に話してくれてたら嬉しいですね」
語り継がれるわけですね。ちなみに何人くらい入ってたんですか?
「6人ですね(きっぱり)」
ろ、6人!? 破格に少なめな動員数ですが、いったい誰のファン交流会だったんですか?
「佐野直です」
アハハハハ! まぁ佐野直を知らない人は各自調査という事で。
「前に新日本の棚橋選手が別れ話のもつれから女性に背中を刺されたじゃないですか。あれもねぇ、復帰のときに丸坊主にして反省したでしょ。違うなぁと……(苦笑)」
なんでもっと有効利用しないのかと(笑)
「その通りですよ! オレたちなんて無理矢理事件を作ってやってるんですから。あんな事件、お金を出してでも買いたい! 喉から手が出ますよ」
アハハハハ!
「ボクだったらとりあえず相手の背中にナイフを突き立てたり、背中から流血したりしますけどね。まぁ、あれが今のプロレスラーは普通っていう大問題を如実に表した事件じゃないですかね。だってね、これは決して擁護しちゃいけない話だし、悪い事は悪いという前提で話しますけど、金村キンタロー選手の暴行事件って、あんなもの昔は日常茶飯事ですよ」
まぁ、時代なんでしょうね。
「●●●の●●選手なんていまでもエゲつないですよ。しかもモテるし、女関係はものスゴいですよ」
会場人気も男女ともにスゴいですからね。
「九州に女の子の友だちがいて、その子が●●さんに会いたい会いたいって、●●さんだったらなんでもしちゃう!って女の子なんですよ(苦笑)」
い、痛い子ですね……。
「でですね、●●●に知り合いがいまして、その方に電話して『●●さんと会いたい、できれば最後までいきたい』って女の子がいるんですけどって、『キレイで、しかも口は堅いですよ』って言ったら●●さん飛んできたみたいで」
アハハハハ!
「で、一戦交えたみたいで、混じり終えた直後にその子から『今終わった、ありがとう!』って電話がきました(笑)」
真実を知ったらファンは幻滅するんだろうなぁ。破天荒なレスラーがいなくなったという話ですが、一宮さんは今後プロレス界とどのような形で付き合っていこうとされてるんですか?
「今、年齢的に40近いんでそろそろレスラーとしては、こんなボクであっても業界の未来を考えていかないといけないと思うんですよ。とりあえずというと語弊があるんですが、選手のアフターケアっていうのが他のスポーツおりもおなざりなんですよね、死亡事故もなくなりませんし。なので針灸師の免許を取得してトレーナーという立場の人間もできるようになろうと考えて、免許を取得しました」
スゴいですね! そこまで考えているレスラーっているんでしょうか?
「多くはないと思います。あと、今ガッツワールドっていうのをやってるんですけど、お祭りとかでプロレスをするんですね。もちろん子どもたちもいますし、とにかく子どもたちが喜んでくれるんですよ。おもいきり草の根活動ですけど」
まずはそこからですよ! 大きな団体で本格的には?
「たくさんの団体からやってほしいというオファーは正直頂いてるんですよ。ただ、ボクはWARで失敗して、その後IWAと、DDTとそれなりにいろいろ残せたとは思うんで、そういうありがたい声はホントに嬉しいです。でも、全部断ってるんですよ。ボクはですね、プロレスラーとしての人格形成みたいなものを育てたいというか、それが一番大事な問題だと思うんですよね。劇団員みたいな純粋な心をもってリングに上がってもらうような人を育成することが急務だと思うんですよね。ボクはですね、プロレスは毎回おんなじ演出でもって毎回同じことをやる感じでいいと思うんです」
完全に演劇化したプロレス?
「はい。マッスル坂井がそういった手法でやってますけど、ボクはもっとふりきったほうがいいと思います。第1回公演第2回公演と、その時々同じストーリーで回した方がいいともいます。というかもはやこんな話をねぇ」
してること自体がプロレス業界は末期にきていると?
「今後は真摯にですね『プロレスはやっぱスゴいんだ!、ガチなんだ!!』っていうものを見せてかなきゃいけないです。それはやっぱりメジャー団体の責務だと思うんですよ。インディーで誰が強いだのナンバーワンだのってやってても誰も見向きもしないですから。じゃあインディーには何が出来るか、強さに対してきな臭さとかエンタメとかいろんな部分で、オリジナリティーがあるものを残していくしかないんです」
四角いリングにはまだ可能性がある?
「まだまだ可能性はあると思います。どんだけ引き出しを出せるかってだけだと思うんですよ。プロレスの可能性を全部否定するとガチンコになりますよね、真剣勝負もいいですけど、ワクワクするところってなるとボクには?です。ガチンコの難しさって興行の組み立てですよね。いくらいい選手といい選手をぶつけたとしても、こう着状態がつづけば凡試合になってしまう。試合順もそうですよね。セミメインっていいカードふたつ続けてもそんな凡試合がつづけばダメな興行になるし」
格闘技の一般への届かせ方って“誰と誰が戦う”って言ったときにどれだけ食いついてくれるネタかどうかだけですしね。
「ボクはそういう意味ではやはりプロレスに可能性があると思いますね。WAR出身だからってわけじゃないですけど、例えば天龍さんの試合ってガチになる瞬間みたいなのが必ずあるんですよ。絶対にそういう瞬間を一瞬入れるんです。あと相手がフザけたコスチュームを着ていても、その瞬間ガチになるんです。お客さんはそういう瞬間を見逃さないんですよ。試合を作って、魅せて、表現するという部分。リアリティを追求する姿勢、それらがストーリーとなって展開する。プロレス、最高ですよ! 」
以前マネージャーをやってらっしゃった曙も楽しそうにプロレスしてますしね!
「曙さんはホントにプロレスが好きですからね。エンタメも大好きだし、いいんじゃないですか! でね、こないだ曙さんと話してたんですけど、相撲からプロレスに行くっていう道順はあってもその逆はないじゃないですか。もちろん、プロレスから力士になるのは無理ですけど、プロレスラーが相撲を盛り上げるのもありなんじゃないかと」
いいですねぇ! 具体的なプランとかは?
「ありますよ。プロレス界にいる元力士を集めて団体対抗戦なんてできたら最高ですね!」
さぞかし暑苦しそうなリングになりそうですけどね(苦笑)
「いや、リングじゃないですよ!」
は!?
「土俵です!」
ってことは元力士のプロレスラーを集めて相撲の興行を打つということですか!?
「そこで団体対抗戦みたいになったらおもしろいでしょ! 新日本にも全日本にもNOAHにも、インディーにもたくさん元力士はいますし、いいと思うけどなぁ。賞金も出るようにして、アメリカにも相撲の興行ってあるんですよ。アマチュアに相撲レベルで世界相撲連盟ってのがあって公には認められてないんですけど、力士に懸賞金をかけて、興行としてアメリカ全国渡り歩くっていうのがあって」
いわゆる美味しい形ですね!
「ですね。ただ、賞金がかかる相撲アマチュアでは認めてないっていって、それに出たら相撲連盟を脱退しなくちゃいけないってのがあるんですけど、正直誰も連盟の人間じゃないですからね」
曙も脱退してますし、全然問題ないっすね。
「トーナメントよりは総当たりですね。プロレスをやっていない元力士も集めますしね!これは実現させます」
朝青龍はどうですか!
「朝青龍さんは多分でないですよ。いろいろ報道されてますけど、朝青龍は相撲一本な人ですから」
正直、朝青龍のバッシングってどう思います?
「いいんじゃないですか! だって、出てないのにあんなにニュースになるんですよ。なんだかんだ今の相撲界は朝青龍さんが支えてるようなもんですよ。だってね、正直白鵬の優勝なんて誰も喜ばないじゃないですか。安馬が大関とかも全然じゃないですか。やっぱり朝青龍さんですよね」
結局朝青龍が新聞各紙の一面を飾って、相撲低迷のこの時期を相撲記事で埋めてくれてるわけですもんね。
「内館牧子さんもわかってバッシングしてる気がしてならないですよ」
朝青龍のバッシングは相撲界を盛り上げる大きなアングルかもと?
「だって、内舘さんってプロレス大好きじゃないですか! 案外そうなんじゃないかとボクは思ってますね」
当の本人はこの状況をどう思ってるんですか?
「車の中でいろいろと話すんですけど、どこにいっても記者だらけじゃないですか。『オレ、人気あるだろ!』って笑ってましたよ」
堂々な態度、プロレス魂を感じますよね!
「朝青龍さんはそういうのを持ってますね。あのサッカーの映像なんて相撲関係者や相撲ファンはみんな拍手喝さいで喜ぶべきですよ。やくみつるさんとかって相撲界の再発防止委員会じゃないですか。それなのにテレビとかに出て何で相撲界を批判するのかなって首を傾げますね。相撲界に対する愛情が感じられないなって感じます」
あそこに座ってる人たちはただ叩くのが仕事ですからね。
「そういう人たちが増えたおかげで業界がダメになったのかなって思います。やくみつるが出るんだったらですね、相撲界の代理っていうポジションなのであれば、あの人が率先して謝るべきじゃないのかなってのはすごい感じますよね」
頭ごなしにダメだダメだって、もっと弁護しつつ揶揄をしてしっかりと業界を育てていくような会話があるだろうと?
「あれはもう人種差別にしか思えないですよ。あれがもし貴乃花関だったとしたら違うんじゃないかなって……。報道のあり方とかもね。だいたい昨今の八百長問題とかもですよ、ぶっちゃけ一番叩かれたのは貴乃花関ですよ。若乃花関との兄弟相撲で無気力相撲を自分でやったって言ってるのは貴乃花関じゃないですか。なんであそこは叩かれないのか不思議ですね」
元おかみさんもトンデモな感じになってますよね
「女優復帰とかなってますけど、そんな仕事ないでしょ。相撲の仕事ばかりですよ。苦労した苦労したって言うんだけど、相撲界の中の人は苦労するのが当たり前だとボクは思ってるし、世間の人もみんなそう思ってるじゃないですか」
お家事情も悲しいもんがありますよね。
「十数年前は日本の家庭のいわばモデルのような存在だったのに……。まぁちょっと話がずれましたけど、いい意味で朝青龍さんを叩いてるうちはお客さんが相撲に入ってくると思うんですよね。朝青龍さんを潰したいっていう人間と、ガンバレ!っていう人間とふたつに別れてると思うんですよ。そのイデオロギー抗争たるや計算して作れない魅力溢れるものですからね、朝青龍さんが振りまく様々な状況は相撲界の宝ですよ」
今、マット界に足りない幻想を朝青龍は全て兼ね備えていると思うんですが、正直こっち側にはこないんですかね?
「100%ないですね。実は朝青龍さんには……」
※ここから朝青龍を取り巻くマット界のLOVEコール話が展開されるのだが、あまりに衝撃的な内容のためゴメンね自粛!※
えぇぇぇぇ!!
「実際にそこまでの体力を持ってる団体なんて日本にはありませんし、それをわかったゆえでの朝青龍さんの言葉なわけですから、今のところは100%相撲界からマット界に来ることはないですよ」
いやぁ、カッコいい男ですね。朝青龍がこっち側にきてくれることに期待します!さて、あらためてプロレス界は今何をするべきなのかをお聞きしたいです。
「地方でお客さんが呼べるプロレスラーって今誰だかわかります?」
う〜ん、武藤さんとか蝶野さんとか?
「違います、一番お客さんを呼べるのはブッチャーなんですよ」
ブ、ブッチャー!? いまだにですか?
「結局、プロレスファンというのがその世代から下がいないんですよ。ゴールドバーグがど田舎にきても『は!?』で終わりますからね。地方は大切です、でもその地方はまだ昭和で止まってるんですよ。ハンセンが挨拶にくるってだけでお客さんは埋まりますからね」
それは逆にチャンスなんじゃないですか?
「その通りです! プロレスというものを原点に戻して、真摯に表現していけばおのずと熱は生まれる土壌がまだあるんですよ。そして、この流れを作るにはやはり新日本さんが頑張らないといけないと思うんです。もう任せるしかないですよ!」
新日本の未来にプロレスの未来がかかっていると?
「だと思います。そして、そこにない楽しみや仕掛けでもって、インディーはインディーなりに業界をもり立てて、盛り上げていかないと思いますね! 」
新日本にも頑張ってもわらないといけないですが、今後の一宮さんの活躍に期待しております!
「ありがとうございます! 頑張りますよ!!」





