

今回は、国民的ブレイクをはたしたテクノポップアイドルPerfumeの影の功労者でもある掟ポルシェさんに、昨今のアイドル事情をフィルターに、Perfumeのブレイクの秘密についてとことん語っていただきたいと思います。
「よろしくお願いします。いやぁ、アイドルですか。1990年前後からアイドルは冬の時代を迎えるわけなんですけど、その要因のひとつとして、アダルトビデオ(以下、AV)の普及が考えられると思いますね」
ア、アダルトビデオの普及がアイドル界を破壊したと?
「過言ではないと思いますよ。80年代中盤以降、AVの普及によって女性の性欲というものが一般レベルで認識・肯定され始めるんです。で、それと同時に、男の純情という尊い精神の価値がドンドン下がっていったんです。それによって、ヤンキー的な男の子の嗜みだったはずの"アイドルを好きになる、アイドルを応援する"という行為、つまり疑似恋愛的な行動が、女性の性欲が肯定された世の中でだんだんと恥ずかしいことにかわっていったんじゃないかと思っています」
男がいつまでそんなションベン臭いもん追っかけてんだみたいな?
「そうです。で、その結果、アイドルという存在の周りに、ヤンキー的な男の子、つまりクラスの中のケンカ強い組男子がいなくなっていった。そこでいわゆる血気盛んな肉食動物たちがいなくなった空間に入り込んできたのが草食動物、つまりクラスの中のケンカ弱い組男子、勉強できる組男子たちなんです。そういった層が90年代以降、アイドルファンの主要層なっていくんですよ」
弱きものたちが支持するジャンルって繁殖的に非常に厳しいですね。
「その通りなんです。現代日本は"女性と性欲をなんでもかんでも直結させたがるオッサン化社会"ですから、ケンカ弱い組が支持するジャンルって一般的にどうしても排除・マイノリティ化される方向にいくんですよ。"アイドル=オタクが好きになるもの"という図式が出来上がって、"オタクが支持する気持ち悪いもの"ということで差別の対象になったのが、現在のアイドルというジャンルなんです」
まさに"いいとこなし"的なジャンルに……(苦笑)
「成り下がってしまったわけです。今の時代に疑似恋愛を売り物しているんだから、そりゃ成立するのが難しくて当たり前ですよ。片やAVの出現で普通の女の子の性欲が完全に肯定されている世の中で、フリフリのドレスを着た女の子が、淡い片思いの歌詞をブリブリに歌うのを見て、「この子はなんて清純なんだ!」と真剣にありがたがってるとしたら、ちょっとマズイですよね」
アハハハハ!
「だからですよ、徐々にアイドルというものが衰退していって、オタクが好きっていうもの自体が全て差別されていく。どれだけ音楽のクオリティーが高くても、オタクが好きになるものだからダメみたいな。じゃあ生粋のアイドルであるPerfumeがなぜこんなにウケたのか? そもそもPerfumeがなぜこんなにブレイクしたかというとですね、いくつもの理由が考えられるわけですけど、まずひとつは単純に、『疑似恋愛を売り物にしていなかった』ということ」
というと?
「アイドル歌謡曲ってものは本来"鼻にかけて"歌うわけです。鼻にかけて歌うっていうことはつまり何かと申しますと、あれは喘ぎ声の代用品みたいなものなんですよ」
アイドルの歌は喘ぎ声の代用品なんですか!
「ですね。童貞男子やモテない男の子にとって、アイドルの歌は女の子の喘ぎ声の代用品としての機能を持っていると思っています。もちろんアイドル本人の喘ぎ声を実際に聞ける人はほんの一握りですけど、その辺の女の子の喘ぎ声さえリアルに聞きたくても聞けない男の子を主な顧客層に設定して、あえて彼らをモヤモヤさせる発声法で歌わせているわけです」
それじゃまるでエロテープじゃないですか(笑)
「極論ですが、本来アイドル歌謡曲はエロテープみたいなもんだと思います。童貞の男の子が聞きたくても聞けない女の子の喘ぎ声のようなものをCDを通して1,050円で販売しているんだと。もちろんアイドルオタクの人たちは性欲処理のためにそれを購入してるわけじゃなく、もっと甘酸っぱいものが欲しくて買ってるんだと思いますよ。性欲を喚起する目的ならAVを見ればいいけど、淡い恋愛感情を喚起したいんだからアイドル歌謡曲を聴くという手法をとってるだけで。俺もアイドル歌謡曲は大好きですし、それ自体を否定する気もないですけど、アイドルというものが再び広く一般に受け入れられるようにするには、女性と性欲をなんでもかんでも直結させたがる現代のオッサン化社会に対する言い訳が必要だという話で、こんな極端な話をしているんですけど」
えっ、言い訳なんですか?
「その部分にちゃんと言い訳できるものじゃないと、21世紀にアイドルというものが再びブレイクすることはありえなかった。オッサン的金玉丸出し発想でいけば、悲しいかな、『好きだったらヤッちゃえばいいじゃん!』ってことになってしまうんですから。恋愛のニセモノであるアイドル歌謡曲を通して、ステージの上の女の子を追っかけるなんて、オッサン化社会から見たら確実に不健全なわけですよ」
しかしPerfumeは違った?
「まず、端的に言って、Perfumeのサウンドは最初からヴォーカルにエフェクトがかかってますよね。曲も本格的なクラブミュージックとしても聴けるテクノトラックで、アイドルの曲とは思えないほど重低音も入っている。こうなったときに何を感じるかというと、一般大衆は『これは疑似恋愛の対象として作られてないな』ってことを敏感に察知するんですよ」
これは童貞だけのものじゃないと無意識のレベルで?
「その通りです。つまり、童貞やオタクだけのために作られたものじゃないってことを前情報なしに耳だけで認識するんですね。擬似恋愛と無縁に存在するアイドルということで、オッサン化社会の横槍をうまくすり抜けて、音楽だけでまず評価されるに至った。しかも、そこからさらに広く広がっていく力を持っていたということです」

その力とは?
「やはりそこにガチンコのストーリーがあるかどうかですね。感情移入という部分です。オタクだけじゃなく、一般の方々にも感情移入してもらえるストーリーをPerfumeは持ってたんです。やっぱり8年という無風状態な下済み時代があって、苦労した下済みを通して、それまで何があっただとか、何がどう変わっていっただとか、そういうものをファンと共有できている。これも非常に強い部分ですね」
最近のアイドルとPerfumeとではそこが明らかに違う?
「全然違います。Perfumeと後発のテクノポップアイドルとの決定的に違う部分はそこですね。他の子たちもここに至るまでに苦労はしてるんだろうけど、浪花節としての威力が弱い。そういったストーリーを持っているアイドルはオレが知るかぎりでPerfumeとモーニング娘。ぐらいです。モーニング娘。なんて、『ASAYAN』っていう番組を通じて、デビューするには5万枚のCDを売らなきゃダメみたいなね。そういうところから努力と情熱だけで這い上がってきたというね。そんな雑草軍団の物語に日本人の心の琴線が触れたんですよ」
逆にそういったストーリーがないと売れない?
「だと思いますね。例えば最近のテクノポップアイドルの子たちだってそれなりに苦労はしてるんでしょうけど、まったく作られてないリアルなストーリーにはかなわないですよ。モーニング娘。だって、そもそも平家みちよが出たロックヴォーカリストオーディションの落選者5人の寄せ集めですよ。Perfumeだって事務所やなんかが大々的にドカーンと売り出したアイドルじゃないですからね」
Perfumeは広島から愚直に這い上がってきたんですよね。
「Perfumeは広島のアクターズスクールの生え抜きユニットなんです。そこから100人前後のライブ集客とか、CD売り上げ1,000枚〜2,000枚といった地味な数字の中を8年頑張って今があるんです。事務所がしかけるなら、CDなんかも莫大な枚数を事務所が買って、それこそデビューアルバムが何万枚売れました的な操作をしますよね。でも、Perfumeはそんなの一切なしで」
それこそ、ひとりひとりが曲をちゃんと聴いて。
「Perfumeのことを知らなくても、『この曲いいな!、誰だろ?』って、いろんな人が思って、CDを買うに至った。これだけCDが売れない時期に、買わせるだけのモチベーションを与えるパワーを持った音楽だったからです。それこそ、これまでのアイドル界はそんな基本的なことすらおろそかにしてたということでしょうね」
いい曲を作って発信するという音楽としての基本的な作業ですか?
「音楽という部分で『カッコいいものを作ろう』という姿勢を第一に製作されない奇特な業界なんですよ。今も昔も『アイドル歌謡らしいもの』を念頭において作られているものがほとんどで。」
80年代から全然かわってないと?
「『アイドル好きにはこの程度でいいだろ』っていう商売は多いですよ。いまだにフリフリの服着させて『彼氏なんていません!』って言わせる商売が通っちゃうし望まれてる。アイドルに明るくない芸能事務所の方々がアイドル産業に一から着手しようとすると、やはりベタベタなアキバ系のアイドル像をなぞろうとすることしかできない。いわゆるオタクの人たちを主なリスナー層に想定して商売を始めている時点で、商業的には頭打ちだとなんでわからないのか俺としては不思議でしょうがないんですよ。アイドル歌謡曲という限定された村社会だけの音楽的クオリティーしか追い求めないのは、アイドル業界にとっても不幸だと思います」
エロテープに音楽的要素なんていらないですもんね(苦笑)
「エロテープなりの恋心を喚起する何かがあればいいという作りで。つまり、恋愛弱者な男の子たちの想像力を無慈悲にかき立てられればそれでいいんだと。で、結果的に恋愛弱者の男の子の心をこれでもかといわんばかりに揺さぶる代物ができあがっちゃうわけですから、一般からすればこんなに気持ち悪いものはない!ってことになるという、本当に不幸なループがありまして……」
ゆえに、一般社会から排除されていくという……。
「そうです。でも、オレもアイドル歌謡曲は好きですし、アイドルファンの気持ちもわかります。だけどね、もしアイドルファンたちが『なんでオレたちが好きなものは世に出ないんだ?売れないんだ!!』って思うのなら、オタクだけに向けられた閉じた作りのものから、ファンも製作者も脱却しなきゃいけない時期に来てるんだと思うんです」
それらは全て性欲という男として逃れられない現実に直結しているんですか?
「むしろ俺が気にしているのは、オッサン化社会のなんでもかんでもエロに持ってきたがる穿った見方なんですよ。「アイドル好き=ロリコン」みたいなことを、親戚の叔父さんとかつきつけて来がちじゃないですか。でも実はアイドルファンって、本当は性欲と向き合わずに女の子のことを好きでいたい人が大半だと思うんです。だからロリコンとペドフィリアの違いすらわかってないオッサン社会の住人たちの批判の目に留まらないように、もっと単純に、性欲とも擬似恋愛とも遠くにある、言い訳しやすい新時代のアイドル歌謡曲がかなり前から必要だったと。それが理想的な形で表れたのがPerfumeだと。特に中田ヤスタカさんの作る歌詞は、単なる擬似恋愛を生々しく伝えるものではないのが強みだったんですね」
Perfumeには恋愛感情は存在しない?
「疑似恋愛を入口とするところからはじめてないんですよね。ただ、人間ですから、人となりが魅力的だと分かってしまうと、擬似恋愛と無縁に音楽そのものから入って好きになっても、その人そのものを好きになっちゃうもんでしょう。Perfumeに関しては、コンサートを観に行ったらもう確実に好きになってしまうんです!(奮)

恋愛感情ありありじゃないですか(笑)
「なんでかというと、あの3人は本当に性根が良くて、例えば同じクラスにいたとしたらもう確実に好きになってしまうぐらい魅力的な人間性を持ってるんですよ。見た目だけじゃないです、あの3人が話す言葉とか、佇まいだとか、もうその行動全てが、普通に恋愛感情としての魅力を放ちまくっているんです。だからですね、『オレたちはPerfumeを恋愛対象として見て好きになっているんじゃない、そんな下品なものじゃPerfumeはないはずだ!』と言ってファンになってるのに、知らず知らずの内に『で、3人の中で誰が一番好き?』みたいな話をしだすようになっちゃうんですよ」
アハハハハ!
「申し訳ないですが、それはもう仕方ない」
Perfumeって、だいたい最初はのっちから入りません?
「よくあるPerfumeのファンの推し(=誰のファンかということ)の変遷ってあるんですけど、3段階で構成されてまして。2ちゃんねるだとかで言われてる話をまとめた駄話ですけど聞きますか?」
是非、お願いします(笑)
「まず、先ほどおっしゃられたように、最初はルックスを通じてのっちから入っていく人が多いですね。で、コンサートを観に行って、あーちゃんの喋りだとかおもしろさにやられてしまう人がものスゴく多い。でもこのふたりはですね、トークにしろ存在感にしろ、ちょっと普通の男の子では太刀打ちできないというか、ちょっと大物過ぎる部分があるわけです。すると、ふと見れば、ひとりだけ普通の女の子がいるじゃないですか。ふたりの暴走をキチンと止めて、ちゃんと整然と流れを戻してくれるかしゆかがいるわけですよ」
つまり、最終的にはそのほとんどのファンがかしゆかに流れていくということですか?
「最終的にかしゆかにいく人はオレの周りでも多いですね」
ちなみに掟さんは?
「いやいやいや、3人の中で誰かとか、そういうのはないですから。何度も一緒に仕事をしている手前、見方がちょっと違いますからね。さすがに恋愛感情持つには至りませんよ。だって、それこそ彼女たちの父ちゃんや母ちゃんまで知ってるわけですよ。しかも、のっちの父ちゃん、オレと同い年ですから」
アハハハハ!
「母ちゃんなんてオレの2個上とかですもん。そんなもん恋愛対象になるほうがおかしいですよ」
のっちから見て、お父さんと同い年の掟さんって男としてどう映ってるんでしょうね?
「少なくとも恋愛感情の対象ではないでしょう。でも、まぁなんですかね、向こうが勝手にオレのことをそういう風に見るってんなら、オレは別に引き止めませんけどね」
アハハハハ!その気ありありじゃないですか。
「だからそんなの微塵も思ったことないですって! 三人ともこんなインタビュー読んだら絶対引くよ! もう勘弁してください、その辺は!」
何が起こるか分かりませんけどね! さて、Perfumeがまだ無名だった数年前、Perfumeのメンバーが秋葉原の歩行者天国で自らビラ配りしていた頃から応援されていたそうですけど、Perfumeがまさかここまで売れると思ってました?
「いや、やってることの正しさから、これはもっと売れなければおかしいと思ってましたけど、まさかここまでオリコンで一位になるまでに売れるとは、さすがに予想できなかったです。ただ、彼女たちには『君たちがやっている音楽は間違っていない!素晴らしい!このままの路線で行けばなんとかなる!!』と励ましてましたよ。プロデューサーの中田ヤスタカさんが作る音楽を受け入れて、今後も同じようにやり続ければ何とかなると思うって、よく彼女たちには言ってました」
何とかなるどころか大ブレイクですよ!
「それこそ頭の中にあったのはクワトロだとかリキッドルームだとか、最終的に1.000人程度の集客ならいけるだろうとは思ってたんですけど、秋には武道館ですもんね。でも、それぐらい強度のあるいい音楽をやってましたし……、そうそう、彼女たちはもう当時から喋りがスゴかったんですよ。それこそあーちゃんなんて"フリオチ"ができるんです! 天才ですよ」
自分でふって自分でオトす的な?
「そうです。しかも、自分でふったことを忘れちゃって、自分で違うオチに持っていっちゃうんですから、もうまさに天才です。そのしゃべりの底力にキャラクターの魅力が重なって、音楽は言うまでもなく素晴らしい。そんな完璧なものが目の前に現れたら、世に出してあげたいって思うでしょ?それこそ、秋葉原のオタクの皆さんだけのものにしておくのはもったいないと思って、色々助力させてもらいました
ただ、別にオタクが好きになる分には構わないというスタンス?
「もちろんオタク層の支持を否定するつもりなんてまったくないですし、オレ自身オタクですからね。でも、秋葉原に閉じ込めておくにはあまりに惜しかった。だから、ロックの殿堂である新宿ロフトのロマンポルシェ。主催イベントにPerfumeに出てもらったんですね。で、誰を見にきましたか?ってアンケートで最初の方はPerfumeって答える人なんて数人だったんですけど、回数を重ねる内に、Perfumeを見にきたって人が一番多くなってましたから」
掟さんの予想が的中したと!
「波は確実に来だしてましたね。しかも、波がきた頃に発売されたのが『チョコレイト・ディスコ』で、その頃から木村カエラさんが『これいい!』とラジオで毎週かけてくれるようになって、そういう草の根運動が一般レベルまで浸透し始めて、その流れの後に最高のタイミングで『ポリリズム』っていう名曲中の名曲がACのCMに起用されて、『この歌は誰の歌?』って評判が一気に広がったっていう」
しかも、8年間という長い沈黙から一気に!って感じですもんね。
「いい話ですよ。最近の流れしか知らないファンからしたら、Perfumeはアイドルって感じじゃなくてアーティストって感じで見えてるかもしれないですね。しかも、Perfumeはテクノポップ+アイドルという曲調をお家芸にまで持っていきましたからね。そのおかげで、どんだけクオリティーが高い曲を作っても、後続は全てPerfumeの亜流、パクリでしかないと思われてるでしょうし」
リアルかつ重厚なストーリー、音楽的クオリティー、感情移入できるキャラクターと、全てが計算なしに備わっていたからでしょうね。
「その通りです。まぁ後続の子たちも適度には売れるでしょうけど、Perfumeの亜流という見られ方から脱却するのはかなり難しいでしょうね」

今はテクノポップ+アイドルで売り出しているアイドルたちにとっては極寒の時代ということ?
「まぁそうですねぇ、Perfumeがもっと売れることによって、アイドルというジャンルが底上げされて、差別されないようになったら、もしかしたらそういった子たちにも活路ができるんじゃないかとも思うんですけど」
アイドルが差別されている状況ってどんなものなんですか?
「先ほども言いましたけど、今はまだアイドルといえば『オタクが好きなもの』というレッテルを分厚く貼付けられている存在ですからね。そこで不思議なのが、アイドルも所属事務所もアイドルファンも、どうやったら外の世界に出て行けるかということよりも、オタク社会という自分たちの村自体を大きくしていく方向にシフトしていったんです」
一般社会という村に匹敵する村をオタクだけで作ってやろうじゃないかと?
「その通りです。で、できあがったのが秋葉原という街なんですよ。ちなみに、この中野(インタビューはまんだらけ中野店にて)っていう街は、言うなれば秋葉原の外付けハードディスクみたいなもんですよ」
アハハハハ!(爆笑)
「秋葉原の容量が超えちゃったんですよ、地価も上がりまくりだし、秋葉原のショーケースも空きがなくて、新しく借りるのが大変になってきたりして。じゃあ他にもう一個秋葉原を作っちゃえばいいじゃん!っていうのが、近年の中野の奇妙な繁栄の実情なわけで。徐々にオタクが秋葉原から溢れ出して、東京の真ん中を飛び越えて、中野と秋葉原でオタクの逆ドーナツ化現象を引き起こしたというね」
オタクの村が東京23区を取り巻くように発生していると?
「中野はいつの間にかオタクの街みたいになっちゃってるでしょ。でも、この中野ブロードウェイっていう建物はですよ、40年前は今の六本木ヒルズのような扱いだったんですよ」
えぇ!? そうだったんですか!
「六本木ヒルズがオタクの村に取り込まれる可能性は高いですよ。六本木ヒルズに40年後には、まんだらけ●●店だとかが何十店舗も出店するようになって、他にもレベルのそんなに高くないメイドカフェなんかがテナントに入るわけですよ。秋葉原と中野だけじゃもう容量パンパンなわけですから、安住の地を求めるオタクたちが、秋葉原や中野や幕張メッセや東京ビッグサイトなんかから六本木を占拠す る時代もそう遠くはないと思いますよ」
六本木がオタクの街に……、なんだか恐ろしい未来予想図ですね……。
「ただ、たとえそうなったとしても、あくまでオタクは「変わった人たち」として、一般からマイノリティとして押し込められ続けるんじゃないかと。ネットの中は別として、一般マスコミではオタク文化が持ってる商業的な数字などないことにされちゃいますから。コミケに何十万人集まったとかは一社会現象として取り上げられても、声優アイドルのCDがオリコンで上位に入ったとか、ネット以外ではニュースにならなくて黙殺でしょ」
Perfumeとモーニング娘。はその村社会から見事に脱却したと?
「作り手側に"アイドルオタクにウケるものを作ればいい"という意識がなかったですからね。中田ヤスタカさんが初めてPerfumeに曲を提供する際のディスカッションのときに、事務所の人からこう言われたそうなんですよ『アイドルの曲にしてはカッコ良すぎる』って(苦笑)」
ダメ出しの理由が"カッコいい"からですか(呆)
「『カッコよすぎてダメだと言われたのは初めてだ』って。でね、この状況は間違ってると痛感されたそうで、そこで改めて自分がカッコいいと思うものを普通に提供すれば、アイドルソングでありながら広く受け入れられるはずだと考えられたと思うんです。アイドルという存在を一般レベルで差別されないポジションに戻すって理念をPerfumeといっしょに地道に続けられて、結果はご覧の通りですよ」
つまり、作り手として当たり前のことをやっただけ?
「その通りですし、だからこそこんなに美しい話はないと思える。Perfumeと同じラインで後発の誰かが攻めても勝てない部分ですよね」
勝てそうな人材も見当たらない?
「少なくとも、テクノポップ+アイドルでは難しいでしょう。それこそ、先ほども言いましたけど、みなさん音楽としては非常に高いクオリティーのものをやられてはいますが、いかんせん、アイドル本人のキャラクターに魅力が足りないというか。中には自分の方がテクノポップアイドルとして本物であるかのように出てくる子もいますし、やはりそういった子にはPerfumeのファンは確実に反感を持つわけですし、一般からもパクリとしか思われないわけですよ」
どちらの村からも反響も頂けないという最悪の事態ですね。
「500人や1,000人の反響ならなんとかなるかもしれませんよ。でも、それ以上はやはり"何か"を持っていないと到達できない世界ですからね。オレはそういう子たちをキライじゃないし、否定はしませんよ。ただ、かわいそうだなと。安易に二匹目のドジョウを狙わせるのは事務所が罪深いですよ。人気が出なかったとしてもアイドル本人のせいじゃない」

+テクノポップは難しいですしね。
「しかも本格的じゃないとダメです。最近ですね、Perfumeのブレイクによって、徳間ジャパンというレーベルがちょっとしたアイドルレーベルになってきたというか、アイドルの仕事に真剣なわけですよ。で、最近はバニラビーンズっていう2人組がいるんですけどご存知ですか?」
去年のデビューなのに早くもメンバーチェンジしたあのバニラビーンズですか?
「そうです(苦笑)。彼女たちは基本アイドルなんですけど、カーディガンズに代表されるスウェディッシュ・ポップ(スウェーデン・ポップ)を本格的にやっているんですよ」
スウェディッシュ・ポップ+アイドルですか!
「音楽的にはもう素晴らしいし、+αという部分では絶対に間違ってないと思いますね。正直、テクノポップ+アイドルっていうのがPerfumeによって完全にお家芸化されているわけですから、もう音楽的観点だけで言えば他に誰もやってないジャンルならもう何でもいいとオレは思うんですよ」
マンチェスターとかグランジでもいいと!
「全然ありでしょう!マイ・ブラッディ・ヴァレンタインみたいな音楽しかやらないシューゲイザー・アイドルだとか。俺見てみたいですもん、そんなのが出てきたら」
アハハハハ! どんなジャンルなんてのはもはや関係ないと?
「デスメタルなんかでも別にいいんですよ。本格的なデスメタルをデス声で歌うアイドルっがいたら、俺は大好きになってしまうと思います。バックトラックをCarcassのメンバーが製作してるとか、もうそのくらい本格派にやってくれるなら面白い。Perfumeがアイドルなのにサマーソニックに出演したみたいに、デスメタルアイドルがラウドパークに出演する日も近いかもですよ」
アイドルがメタルの祭典に! そりゃスゴいですよ!!
「そんなことが起こればアイドルが置かれている状況は一変するかもしれないし。一般の音楽ファンから支持されるようになれば、『これはアイドルだけどオレたちが好きになれるものだ』、聴いてて恥ずかしいものではないって言い切れますからね。『耳で聴いて素直にいいと思った音楽を、やっているのがたまたまアイドルだった』というのが一番望ましいですよね。オレはそういうのが出てきたら応援するし、Perfumeの後続で+テクノポップなんかやるより伸びシロはあると思うなぁ」
本格的っていう部分でいうと、サウンドじゃなくてもいいわけですよね?例えば中川翔子さんなんてアイドルに+オタクという感じですけど。
「その通りです。つまるところ、冠はなんでもいいわけですよ。一番大切なのは"本物"であるかないかだけですよ。中川さんがスゴいところは、オタクというある意味一番難関な冠にも負けずにというか、中身はその辺のオタクなんかより全然スゴいじゃないですか。カンフー映画の知識などでは、そんじょそこらのオタクよりも濃い知識を持っていて、その魅力を語るトーク力も持っている。それでいてルックスもずば抜けてカワいい。中川さんは今を生きるアイドルとしてPerfume同様に完璧な存在だと思います」
事務所も長い目で取り組まないとダメですよね。
「ひとつのバンドを構築していくぐらい本格的に取り組まなきゃダメですね。本気でやらせるつもりがある事務所があれば、その辺はもう狙い目ですよ。もちろん、キャラクターが面白いこと前提ですけど。もし、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインみたいなサウンドを本格的にやっていて、しかもPerfumeぐらい人間がおもしろかったら、もうそれは絶対に売れます」
でも、そこが一番難しいのでは(苦笑)
「だからPerfumeはスゴいんですよ。だって、今彼女たちは『HAPPY』ってバラエティー番組をやってますけど、めちゃくちゃうまく回すんですよ。できます?19才の女の子がメイン司会なんて? しかも芸人が本職のにしおかすみこより笑いを取ってるんですよ!!」
芸人ですらそうそう笑いを取れない時代ですしね。
「もうね、Perfumeのライブや出演しているテレビ番組を観るたびに、『オレもあーちゃんみたいにおもしろくなりたいな』っていつでも、心の底から思いますもん」
アハハハハ!(爆笑)
「ホントにスゴいですよ。でね、あーちゃんがちょっと最近疲れててというか、やっぱり毎日大学にもちゃんと行ってるから元気ないときもあるんですよ。そういうときにですよ、周りのふたりが頑張らなきゃなと奮起して、最近ではのっちとかしゆかのトーク能力まで著しく上がってきてるんですよ」
そ、そうなんですか!
「そうなんですよ。あーちゃんのボケっていうのは暴走型なんです。もう『誰か止めてあげないとマズいよ!』っていうぐらい。こないだも『LOVE THE WORLD』で有線放送大賞かなんかに出たんですけど、そんときのあーちゃんのコメントが『ありがとうございます。この曲は、1回聴いてもどこがいいのかわからない曲なんですけど……』って(笑)」
自分で言っちゃいましたか!
「その瞬間、『それは……』ってちゃんとふたりが止めてくれるという。まぁその後「3回ぐらい聴くとよく思えてくるんですけどね!」と自分フォローもしますけど(笑)。その辺の『ぶっちゃけ過ぎだろお前!』っていうのをちゃんと突っ込んであげないと、それはもうただの奇妙な人で終わってしまうじゃないですか。ボケがいたら突っ込みがいないとダメなんです。その突っ込み役っていうのがもうPerfumeにはいて、フォローがきちんとできていてですね、音楽的に見ても素晴らしいけど、漫才トリオとしての才能もあるなって思いますね」
漫才トリオって(笑)
「いやもうホントにそうですよ。それこそテクノ繋がりで、YMOがトリオ・ザ・テクノで『THE MANZAI』に出てきたみたいなもんですよ」
アハハハハ!
「そのぐらいのどんなジャンルに出ても成功できるなっていうか、もうPerfumeは何をやっても成功するんだろうなって気がしますね」
Perfume熱はまだまだ冷めやらぬといったところですか?
「もうオレが応援なんかしなくとも、Perfumeのみなさんは国民的アイドルですからね。まぁ、西脇綾香大臣からすれば、『そんなことを言わずにまだまだ応援し続けろ』ということでしょうから、それはそれで嬉しいですけどね」
自分の手を離れてしまったという寂しい気持ちには?
「うーん……。まぁ、一抹の寂しさはあるにはありますけど、それよりも、これだけ売れてくれたという嬉しさのほうが上ですよ。だって、Perfumeは2000年代を象徴するアイドルになれたんですから。そんな時代を担うアイドルが世に出て行く上で、自分なんかが微力ながら何か力になれたってことは本当に嬉しいですね」
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「火事だ火事だ火事だぁ〜!火事はどこだ?オレんちだぁぁぁ!!!(絶叫)」
アハハハハ! しかしまぁ、ご自宅全焼なわけですけど……、大変でしたねぇ(苦笑)
「まぁマンションが全焼ってわけじゃなかったんで助かりましたけど、自分の部屋は完全に全部ダメになっちゃいました(涙)」
けが人とかは大丈夫だったんですか?
「そこはホントに不幸中の幸いというか、となりの部屋にも燃え移らず、けが人も死人もなく、犬猫一匹たりとも被害なく……」
しかしシャレになってませんよね。2004年にロマンポルシェ。がリリースしたアルバムタイトルが……。
「タイトルが『おうちが火事だよ!』ですからね(苦笑)。ホント、ふざけたタイトルつけるもんじゃないですよ。この火事で、言霊って本当にあるんだなって実感しました」
火事で言霊の存在を知りましたか!
「だってですよ、あのPerfumeだって『武道館でやりたい』って言ってたら本当になっちゃったもん。男は一度吐いた言葉を呑み込んじゃいけねぇんだよ!ってことなんでしょうね」
その男の生き様の代償が自宅全焼っていうのもどうかと思いますけど。で、そもそも火事の原因っていうのは?
「犬の散歩に出かける際にベランダの窓を開けっ放しにして部屋を出たんですよ。その直前に嫁が自室でタバコを吸っててですね、犬の散歩にいっしょに行くってことでタバコを消して出かけたわけです。しかし窓を開けっ放しにして出かけたものですから、強風が吹きぬけたときに灰皿ごとひっくり返って、吸殻にくすぶっていた火種が畳に引火したようで……、さすがに予測不能ですよ」
じゃあ原因を作ったのは、奥さま……。
「風です(遮って)。ここは夫として嫁を守るのが務めですから、原因は風ですね(断言)」
わ、わかりました。でも、どうですか? 自分の家が焼けてしまった気持ちは?
「そんなもん茫然自失に決まってるじゃないですか!」
でしょうね(苦笑)
「まぁ、けっこうすぐに落ち着きましたけど。不思議なことにですね、燃えてる真っ最中の火事場は全然見ていなくて」
どのようにして火事を知ったんですか?
「犬の散歩中に不動産屋から携帯に電話がかかってきまして、『お宅、燃えてますよ』と。『燃えてるだと?こいつはいったい何を言ってるんだ?』って、その時点ではドッキリか何かと疑ったんですけど、どうやらホントみたいで。慌ててタクシーに飛び乗って帰ったんですよ」
ドッキリじゃなかったと(苦笑)
「13:30に家を出て、13:48分に火災発生。で、13:58の段階で携帯に電話がきたんですよ。で、14:15に消火みたいな感じ。でね、近所なのに道が混んでてなかなか家に着かないんですよ。前のほうで車が詰まってて、タクシーが全然前に進まない。『こんなときに事故を起こしてるやつは誰だ!ふざけんな!』って思ってね、事故現場を通り過ぎるときに降りてぶん殴ってやろうってマジで思ってたんですけど、先で車を詰まらせてたのはウチの前に停まってた三台の消防車だったんですよ」
アハハハハ! 渋滞を引き起こしてたのは自分自身だったと(笑)
「二車線の片道を全部消防車と救急車が塞いでたというね。自分で自分は殴れませんよね……」
最高です。で、損害の方はいかほどに?
「家の中のもの全部ですよ。焼けてないものもあるにはあるんですけど、でもそのほとんどが自分が重要視してないものばかりで、殿様キングスの全曲集レコードとかクールファイブのベストアルバムだとか」
アハハハハ!
「『今、こんなもの聴くのか!?』っていうようないらないテクノの12インチだとかね(苦笑)。人間って一番大切にしてるものは、自然と目線の位置に置くものなんですよ。で、熱は上に上にいくわけですし、だから特別重要視していない床付近に置いてあるものほど燃え残っているというね。しかも、プラスチックなんかもガンガンに焼けてますから、家中がもうダイオキシンで充満してる わけです。それが焼け残った本やレコードや服が吸い込んじゃってて……」
ものというものが見えない毒で汚染されてしまっている?
「一見焼けていなくても置いておくだけで毒を発生するわけですから健康を害する恐れがありますし、電化製品なんかも、機械の中に煙が入り込んでいて、ショートして二次災害を引き起こす可能性が残ってるもんで……、焼け残ったパソコンなんかも泣く泣く捨てました」
大切な音楽制作に用いる機材なんかは?
「それが消火活動のときの放水で全部ダメになりまして。これはもう仕方ないことなんですけど、燃え残ってる機材の上にご丁寧に水ぶっかけてくれましたから。オレ自身も火事場処理でダイオキシン吸いまくりのリアル毒毒モンスター状態ですよ。火事場の後処理してるだけで気持ち悪くなりますからね」
トロマ社いらずですね(笑)。人間、持ち得るものを全て失うと何か大切なのかがよくわかるという話がありますが、今回は掟さんの「焼けたものでこれだけは買い直しておきたい!」っていうテーマでダラダラいきましょうか!
「まぁとにかく大変ですよ。火災保険は満額でおりたんですけど、ハードを買い直したらお終いの金額なんで。例えばDVDプレイヤーを買い直してもソフトは買い戻せない程度。なので、ちょっとでも小金を稼ごうと思いまして、まんだらけさんではないんですけど、同じ中野ブロードウェイにあるタコシェさんで掟AIDってのを開催してまして」
掟AID?
「火事で焼け残ったものを売ってるんです。背焼けどころか全部焼けてるものばかりですけど」
アハハハハ!
「日焼けじゃないですからね、本当の意味で"火"で焼けてますから。しかももれなくダイオキシンの臭い付き!」
そのあこぎな商売は盛況なんですか?
「それがけっこういいお金になりましてですね、ホントもういらないものがドンドン売れていく夢のアントンハイセル状態ですよ(苦笑)」
掟AIDはアントニオ猪木が追いかけた壮大な夢の惨劇であり、新日本プロレスの史上最大の汚点といわれたリサイクル事業みたいなもんなんですか(笑)
「オレのは成功してますけどね。しかしまぁ火事場で焼けたものが売れるなんて夢にも思わなかったんで、買ってくださった皆様にはホント足向けて寝られませんよ。これからは『掟ポルシェの家が火事になって焼けたもの』っていうだけでオークションが祭りになるぐらい付加価値を付けないとって感じです」
いったい何の付加価値ですか(笑)。火事で焼けたもので今この瞬間『すぐに買い戻したい』っていうもので何を思い浮かべますか?
「そうですねぇ、『嗚呼!! 花 の応援団』で有名などおくまん先生の作品ですかね。どおくまん先生が描く一連の作品は、『下品力』という人間の根源的魅力満載で。ズル剥けのチ●コを隠さないどころか屹立させて「これ、どや!」と見せ付けるかの如くで本当に素晴らしい。中でも『黄金探偵』という作品はもう今すぐ買い戻したいです」
勉強不足ですいません。その『黄金探偵』ってどんな作品なんですか?
「一言で言うと、これ以上くだらない作品に出会ったことはありません! 下品界の頂点ですね」
下品界の頂点!
「『嗚呼!! 花の応援団』を書かれていた頃と同時期に連載されていた作品なんですけど、これがですねぇ……、なんていうのかなぁ(苦笑)。もうそれこそ"酷い"っていう言葉をそのまま形にしているものがあるとすれば、『黄金探偵』こそがベストオブ"酷い"ものですね」
そんなに酷いですか(笑)
「はい。何が酷いってもう全部が酷いわけで抽出できないんですけど、きっと『嗚呼!! 花の応援団』を書くので精一杯だったんでしょうねぇ。ズバリ言っちゃうともうめちゃくちゃなんですよ。取り急ぎ上げられるものといえば、とにかくウンコ出現率、全裸率、ゴキブリなどの醜悪なものの闇雲な登場率はどのマンガよりも高いですね。レベルが違います」
ウンコにフルチンにゴキブリですか……。
「話に困ると必ずといっていいほど出て来るチェンマイ踊りっていうのがあるんですけど、このチェンマイ踊りの醜悪さといったらもうなくてですね、見るとみんなあまりの酷さにガックリして気絶しちゃうんですよ」
なんなんですか、そのチェンマイ踊りって(笑)
「この探偵がですね、自分のチ●コを股の間にはさんで自分を女に見立てて踊りを踊るんですよ。で、その踊りがあまりに酷すぎて、目に余る汚さにたまらなくなって、見ているうちにみんな死んでしまうという」
アハハハハ!(大爆笑)
「踊りを見た人間は必ず死んでしまうんですよ! もうたまらんですよ」
話に困ったら出て来る踊りってことは、チェンマイ踊りが出てきたらストーリーは死にオチになっちゃうんですか?
「『あ! 死んでる!!』という感じで終了です。しかもですよ、これぞどおくまん先生の真骨頂といいますか、このチェンマイ踊りに平均2P以上使用するという大胆さを毎回発揮してくれます」
(チェンマイ踊りを見ながら)これって1コマ2コマでいけちゃうんじゃ?
「余裕でいけます(断言)。もうあからさまにページ稼ぎのためというのが丸分かりなあけすけ感が最高なんですよ。それに見てください、このチェンマイ踊りを賑わせる背景を」
ゴキブリの数がハンパないですね(苦笑)
「この世の中の醜悪なものを全て集めた結果、何かこう崇高なものが産まれているとは思いませんか?」
そう言われるとたしかに……。
「まぁ、多分錯覚ですけどね。『嗚呼!! 花の応援団』ではオ●コにまつわるエトセトラが全面的にフィーチャーされた話でしたが、10本に1本くらいは心にしみる泣かせるいい話があるんですよ。下品の力と浪花節が織りなす抑揚や緩急が黄金比で存在したんですが……」
『黄金探偵』には?
「緩急や抑揚はゼロです(キッパリ)。泣かせる話は1本もありません!」
緩急や抑揚、涙の一滴もない世界、まさにハードコアですね!
「その通り、まさにハードコア! いや、もうこれはグラインドコアですよ!」
アハハハハ! 重くて速いですねぇ。
「機能性重視なんですよね。ハードコアという音楽は贅肉をそぎ落とし、極端な疾走間や破壊の爽快感を味わう機能性重視の音楽ですけど、『黄金探偵』も同じ。下品の核を体感するという機能だけに溢れていて、それはそれは絶品なハードコアなわけですよ」
下品の核を体感できる機能に溢れたマンガ! 是非、読んでみたいですね!!
「是非、読んでください。ただねぇ、この黒バージョンのジャケットはシックでモッドな感じでオススメなんですけど、ジャケット違いで三種類くらいあるんですよ。他のジャケットはもうこれでもかっていうぐらい下品なんですね。家に置いておくだけで夫婦関係が崩れるほど」
いったいどんなジャケなんですか(苦笑)
「黄金探偵がスーツの上から女物の下着と貞操帯をつけてポージングしているジャケとか。このバージョンは買って帰っただけで、あまりの下品さに見せた瞬間家族が死にます」
家族が死にますか!
「ショック死します。もうひとうのバージョンは見ただけで目がつぶれます。『黄金探偵』のジャケットが酷すぎて失明したり死んだりっていう現象がどこの家にでも起こりうるので、女子どもの皆様には絶対見せちゃいけませんよ。あとはそうですね、三条友美先生の『犬になりたい』っていう作品も買い戻しておきたい至極の作品なんですけど」
三条友美先生ってあの官能マンガの?
「エロマンガ界の大御所ですね。ただ、95年あたりからですかね、多分もうエロはやり尽くしたという感があったんだと思うんですよ。その頃の作品はもうハードコアすぎてエロイのかどうかさえわからないという、すごいことになってまして。作品がかなり狂ってたんですよ」
具体的にどんな感じで狂ってきたんですか?
「それこそ巨大ミミズと人間のSEXだとか」
アハハハハ!(大爆笑)
「もうとにかくSMなんかも通り越して、なんていうんですかね、もうだんだんとオカルトやホラーの域になってきてましてね。で、ホラー色が日に日に強くなってきて」
エロの向こう側にあったのはオカルトホラーだったという?
「そうなんですよ。エロからエロオカルトホラーになって、そこからエロが取れてオカルトホラーになっちゃったという。で、この『犬になりたい』ってのは、エロ以外の作家性でも勝負できるという三条先生の自信の表れなんでしょうけど、これがスゴくおもしろいんですよ! 」
生粋のオカルトホラーものなんですか?
「1話が10数ページしかない短編集なんですけど、話にならない人がたくさん出てくるんですよ」
話にならない人?
「人間にしろ、化け物にしろ、宇宙人にしろ、とにかく話にならないんですよ。例えば陵辱された女の子が『さっき●●って約束したじゃない!』と涙ながらに訴えたら、『そんなこと言ったっけ?』ってとぼけられたりとか。嫌な感じに人間味のある宇宙人が出てきたりですね、作品としてのシュール度というか、狂った感性というか、とにかくものスゴいことになってるんですよ。う〜ん、伝わるかなぁ……、それこそ内田百間先生の小説を読んでいるような」
読んでるだけでいたたまれなくなるような?
「読んでると『これはないよな』っていう凄惨な気持ちに苛まれるんですよ。オカルトホラーと言っても、お化けがどうとか、そんな次元の怖さじゃなくて」
あり得ないことにいきなり直面したときの恐怖というか?
「ですね。宇宙人のくせに急に話わかってないふりしてごまかすっていうね。宇宙人が作品に出てくる場合、攻撃されるか友好を望まれるかのどちらかじゃないですか。でも、そのどちらでもなくて、侵略も友好もなく、単に話にならない第三者という形で宇宙人が描かれているんですよ。その扱いもぞんざいでたまんないで すよね」
たしかに"話にならない"って怖いですね。
「『こいつは何を言っても話にならない』ってことほど怖いものはないですよね。そういった意味での恐怖、コミュニケーションがまったく取れない恐怖感、そういうものをオカルトホラーマンガに持ち込んだっていうのはものスゴくエポックメイキングなことだと思うんですよ」
おぉ! これまた是非読んでみたい一品ですね。話を聞くに、三条先生はもうエロじゃなくていいのでは?
「いやぁ、三条先生からエロを取るってことは魚が水から上がるのと同じですよ」
アハハハハ!
「ガンガン泳いでる魚に足が生えてきちゃったから気持ち悪いんですよ。この『犬になりたい』はまさにそういう作品なんです。なんだか気持ち悪い。でもその気持ち悪さがいい」
独特のエロ感も?
「入ってますね。女性が子どもを産む様なシーンがあったりするんですけど、でもその子どもがエイリアンの子どもだったり」
ってことはエイリアンとSEXもしてるわけですね(苦笑)
「気絶してるうちに勝手に子孫繁栄の手伝いに使われちゃったりとかね。とにかく三条先生の作品はオススメですよ!あとはそうですね、大家族関連の本なんかも捨てられないですね」
大家族もの!? それって、お寿司やラーメンと並ぶ数字を持つ大家族もののことですか?
「そうです。子どもを誰よりも多く作るのに人生を懸けているあの姿。ズバリ言って人生の懸けどころを間違っている分野としてはあれに勝るものはないですね」
ないですか(笑)
「核家族化が進んでいるこの時代になんて無駄なことをするんだと」
大家族は無駄ですか!
「今は家族を多く持つっていうのは、狭いながらも楽しい我が家ってだけじゃ済まなくなってる時代じゃないですか。食わせていくだけでも大変だろうし。戦争時とかに子どもがいっぱい産まれるのは死ぬ可能性が少なくないからだっていうでしょ。生物は生命の危険を感じるときは繁殖に走るっていうね。でも、そんな生命の危険がない現代日本で、なんでお前ら死ぬ気で子づくり頑張ってんだ?っていう異様さですよね」
そんな目で見たこともありませんでした(笑)
「そんな魅力に溢れてますよね。大家族ものは"自分が全然理解できない欲望"がたまらないんですよね。大家族の親の感性の中にある『家族が多い=幸せ』という、理解できない思考を見ると、やっぱりこうビンビンくるんですよ」
未来永劫理解できないであろうと確信を得たものって、たしかに気にはなりますよね。
「俺は自分が凡人だから、凡人が抱く並みの欲望にはもう飽き飽きしてるんですよ。料理でいうなら、薄口の上品な味に魅力を感じないんですよね。激甘か激辛かどっちかはっきりしてくれ! みたいな」
なるほど。ちなみに、大家族のお味は?
「ものスゴい激辛!(即答)」
大家族は激辛!(笑)
「なんでこんなに辛いもの食いたいの?と理解できないから、それを好んで食う人を惚れ惚れする目で見つめていたくなるんですよね。大家族の皆さんには、俺たちの知らない何らかの使命があるんだと勝手に思っていますので、冗談抜きでこれでもかと子孫繁栄してもらいたいです。あとは……、オレ、普段着はだいたいセーラーズなんですよ」
80年代のファッションを代表するブランドのあのセーラーズですか?
「そうです。オークションとかでレアものをずっとコレクションしてて。結構な数をコレクションしてたんですけど、煙を吸っちゃって、色も変色しちゃったり、特に臭いが着いちゃったものはもう着れないですから。火事場で失ったもので、ぶっちゃけ一番後悔しているのはセーラーズですね」
全滅ですか?
「半分以上ダメですね。クリーニング屋にも『諦めてください』って言われました。悔しいですよ、赤いスタジャンでマイケル・ジャクソンモデルっていうお気に入りがあったんですけど、オレは服はとにかくカラーリングの地味なものは買わないっていうポリシーがあって、そのスタジャンもド派手なんですよ」
マイケル・ジャクソンも着用してたんですか?
「いや、それは定かではないんですが、とにかく赤地のスタジャンに黒字でマイケルってネーム入りなんですよ。しかも漢字で」
か、漢字!?
「マが魔物の魔、イが異物の異 ケが蹴るの蹴、ルが留年の留、ですね」
アハハハハ! 田舎のヤンキーじゃないんですから(笑)
「しかもオフィシャルモデルですからね、信じられないですよ。当時でも『誰が買うんだ!?』って」
しかし、私服をセーラーズで通しているってのはハンパじゃないですね。
「普通の服を着ていたくない、というやっぱり欲望があるわけですよ、エクストリームでありたいっていう。普通の服を着るのが商売柄苦手でして。だからといって単に派手なだけでもよくないんですよ、そこにもやはり不要な主義主張みたいなものが問われるわけで」
なにか意味が合った方がいい?
「そうです。入れ墨なんてそうですよね。無意味な入れ墨を入れるよりも、何かこう意味がある方がいい。例えばトライバルなら、なんらかの意味を持った梵字を入れるわけじゃないですか、オレはそれと同じだと思うんですよ。セーラーズっていうのはおニャン子クラブが初期に着用していたという、80年代アイドルのアイコンですよね。アイドルを好きだったものにとってセーラーズは憧れであり象徴なんです。それを解散から20年以上経って、何かの恨みを晴らすように着ているというね」
アイドル愛好家がアイドルに懸け続ける執念の行動みたいな?
「そういった嫌な執念みたいなものがセーラーズを着ているだけで体中から発散されるんだと思いながら着てます。プライベートといえども迂闊な服装をできない商売ですから。たまにネットで報告例があがってるんですけど、例えば『こないだ掟ポルシェを中野のジーンズメイトで見ました。失望しました』って」
アハハハハ!
「オレはジーンズメイトとか行ったらダメみたいなんですよ」
なんとなく行ってほしくはないですね。
「でもオレ、ジーンズメイトは好きなんですよ。激安に懸けている以上、ブランドイメージなんてもので勝負してないところがユニクロと違って男らしいし。だいたいですよ、24時間営業ってなんですか? 夜中にどうしようもなくジーパンが買いたいヤツなんていないでしょ。でも、そこがまたたまらなくいいんですよ」
24時間営業をやっていることに意味がある?
「意味はないけど、己に無理を強いる『でもやるんだよ!』精神がある。完全に間違った男の気合いってものをジーンズメイトにはビンビンに感じます。いつ何時、誰がリーバイスの501を所望しても24時間対応できるようにしてあるって、その準備に隙を作らないことへの情熱はスゴいですよ! 24時間ジーパンの裾上げができるようスタンバイしてるってヤバくないですか!」
エクストリームを感じますね!
「感じまくりですよ。男ならエクストリームでありたいという気持ちを持っていないとダメだと思うんですよね!(奮) ……って、何の話でしたっけ?」
セーラーズの話ですね(苦笑)。先ほど、おニャン子クラブといい文言が出てきましたが、青春時代はおニャン子好き?
「愚問です! 決まってるじゃないですか! オレの中でおニャン子クラブの存在はもう一番大きかったですね。なんてったっておニャン子クラブはアイドルの中じゃパンクですからね!」
おニャン子クラブはアイドル界のパンク!
「アイドルってそもそも偶像じゃないですか。そういった価値観を破壊しましたからね。隣のお姉ちゃんがアイドルになった、だから気軽に声をかけられる。そういう親近感みたいなものとスター性に優位させたパイオニアなわけです。アイドルの歌に歌唱力なんてまったく必要ないと言い切ってしまったのもパンクと同じなんですよね。新田恵利さんなんてスゴかったですからね、『冬のオペラグラス』なんてホークウインド(70's英国産伝説のサイケデリックバンド)かと思いましたよ」
アハハハハ!(爆笑)
「ちなみにおニャン子で一番ビンビンきたのはB組(中学生おニャン子)1番&会員番号49番吉見美津子ですね」
おニャン子解散後、最速で脱いだ美脚おニャン子ですね!
「ルックス的にはど真ん中ですね! おニャン子はオレの高校時代そのものです」
当時はアイドルを応援するって男道的にどうだったんですか?
「アイドルをどっぷりと好きになるのはそんなにカッコいいことではなかったと思いますよ。なので、ニューウェイブやパンクといった音楽と平行して聴いて均整を取ってましたね。でも、おニャン子クラブっていうのは、『おニャン子好きなんだよね』って胸を張っても全然OKな存在だったんですよ。隠さなくてよかったんです」
そういった部分もおニャン子は破壊した?
「ですね。まぁそれこそ"放課後のクラブ活動"なんて言ってましたけど、なんていうんですかね、毎日が学園祭的というか、そういう雰囲気を味わったりとか、女の子をアイドルとして崇めるわけじゃなくて、隣の女の子として好きになるというのが新鮮でしたよね。従来のアイドル的な感じではなくて……って何のお話しをしてましたったけ?」
セーラーズの話ですね(笑)。ちなみに一番最初に食い付いたアイドルって?
「う〜ん、最初といえば、小4の頃の石野真子ですかね。石野真子は子どもの目から見てもなんだかセクシーな感じがしたんですよ」
ズバリ、アイドルは性の対象でもあった?
「アイドルがもっと素直にオナペットとしてあってよかった時代でしたからね。それと同時に男の純情に価値があった時代なんで、好きなアイドルでオナニーをしたらいけないっていう暗黙の掟があったんですよ。それはもう絶対に破ってはいけない鉄の掟で、『石野真子でオナニーしたら俺は死ぬ!』ぐらいのことは思ってました」
一度も破ってない?
「破らなかったです。今考えたら何でそこまで頑に守っていたかわからないんですけど(苦笑)。小学生の頃のオレは何をネタにしてましたかねぇ、同じクラスの女の子をズリネタにしてたんじゃないかなぁ」
アハハハハ!
「今考えたらそれはそれで危険な感じがしますけど……。いやでも、まぁ小学生が小学生同士で恋愛するのは自由ですから」
たしかに。さて、「全部燃えたら見えてきた」ってタイトルのインタビューなのですが、燃えてしまったので買い戻したいアイテムを軸にお話ししてきたわけですけど、何か見えてきましたか?
「見えましたね。やっぱり、自分自身にというか、自分が信じる男像を生きていく上で何が大切かっていうのは今回の火事で見えた気がしますね」 |